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 超音波検査では検査中に何か異常や疾患を見つけたときに、ルーチン検査以外にも
確認しなければいけない事が増えてしまいます。



例えば、肝臓の中に大きな低エコーを示す腫瘤性病変を見つけた時、あなたはどうしますか?



まず、腫瘤の位置や大きさを測る、腫瘤の内部エコーや後方エコー、などの質的な情報を集める
というのは基本的な答えで、それだけでは充分とは言えません。



肝臓内に大きな低エコーの腫瘤として考えられるものから、その性質やエコー画像などをもとに
少しずつ鑑別を行い、理想を言えば最終的に一つの疾患に絞り込む事をしなければなりません。



基本的な方法なので偉そうに書いても「そんなの当たり前だ!」という声が聞こえてきそうですが
一応、この場合の考え方を記載します。



肝内に大きな低エコーの腫瘤を認めたとき、そのエコーレベル、形状、性質、を確認します。
この時点で、具体的に考えられるものをある程度ピックアップできていれば良い思います。



 例をあげれば、肝細胞癌、転移性肝腫瘍、肝血管腫、肝のう胞、
等が考えられると思いますが、(もちろん他にもいろいろありますが代表的な例で説明します)
このうち肝のう胞は無エコーを示す腫瘤であり
大きな腫瘤であれば、尚更無エコーに観察される事が考えられるので、この場合は否定的です。



残った可能性が3つになったとします。ここからは、それぞれの可能性を考えて見ます。



肝細胞癌の場合、
 大きく育ってしまった肝細胞癌は大きくなる過程で、分化度が進むと
 場所によってその分化度に違いが出て、「モザイクパターン」を示す事が多くなります。
 肝細胞癌は繊維性の皮膜を持っているので、多くの場合周囲に低エコーの領域が認められます。
 近くに血管が存在している場合、その血管内に浸潤している可能性もあるので血管内の異常陰影も
 探すべきでしょう。
 また、慢性肝炎や肝硬変を伴う例が多いので、その評価や副側血行路や脾臓の状態、
 門脈の血流異常も確認します。



転移性肝腫瘍の場合、
 転移性であるので、他に源発となる腫瘍があるはずです。
 あらかじめ元の腫瘍が分かっている場合もあれば、転移性腫瘍が先に見つかる場合もあります。
 大きく育った転移性腫瘍が見つかった場合、その他にも肝内に腫瘍が多発的に存在する事があり、
 典型的な例ではブルズアイサインが見られる事があります。
 転移性腫瘍も皮膜を持つので、腫瘍周囲に低エコー域が見られる事が多いですが、
 肝細胞癌と比較して繊維性皮膜ではなく、その低エコー域は厚い場合が多いです。
 アルファフェトプロテイン酸性胃癌の場合、門脈内浸潤をきたすことがありますが
 基本的に門脈浸潤を起こす事は稀です。



肝血管腫の場合、
 肝血管腫では皮膜を持たない為、腫瘍周囲に特別な低エコー域は認められず、
 内部が低エコーや混合エコーでも周囲が高エコーの場合はほとんど肝血管腫といっても良いと言えます。
 腫瘍内の血液の量によってエコーレベルが変化するカメレオンサインを見つければ確定診断がつけられます。
 腫瘍内の血液量は豊富ですが、スポンジに水を貯めたような状態で、腫瘍につながるはっきりとした血流を
 ドップラーで認める事はない場合が多いです。




ざっと書きましたが、まだ他にも鑑別する情報は存在します。
これらの事を考えて検査を進めていければ、見つかった腫瘍の鑑別診断を進める事ができます。
単に肝臓内に腫瘍を見つけただけでも、腫瘍の種類によって検査の方向性は変わってきてしますのです。



 ここでは、一例として肝臓に腫瘤を見つけたときの考え方を書いてみましたが、
超音波検査をしていて何か疾患を見つけたときには、このように検査の方向性がルーチン検査から大きくずれて、
得るべき情報が違ってきます。



検査をしていて疑われる疾患の情報や、鑑別するべき疾患の情報、併発する可能性のある異常の有無、など
質の高い検査をする為には、検者の知識と経験が必要になってくるのです。



超音波検査の検者が持っている知識が多ければ多いほど、その鑑別診断は
より確実に、より正確に、より踏み込んだレベルにする事ができます。