超音波検査室 >> 正常例の解剖と画像 >> 乳腺
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 乳房は、皮膚、脂肪組織、乳腺組織とそれらを支える結合組織からなっている。
最も外側から、皮膚、浅在筋膜浅層、皮下脂肪組織、乳腺、乳腺後脂肪組織、浅在筋膜深層、大胸筋、が
存在する。


 乳腺はクーパー靭帯によってテント状に吊り上げられる状態になっていて、クーパー靭帯は浅在筋膜浅層に連続し
クーパー靭帯の数は頭側と足側では頭側の方が数が多い。


 乳腺の最小単位は線胞である。この線胞が集まって腺房を形成し、腺房が集まって乳腺小葉を形成し、
乳腺小葉が集まって乳腺葉を形成する。
通常、成人女性の乳腺には、15〜20個程度の乳腺葉から形成され、それぞれの乳腺葉はそれぞれの乳管を持ち
15〜20個程度の乳管の出口が乳頭に連続する。
乳管には、最終出口の乳頭の直前で線胞から分泌される分泌物を貯留する膨らみがあり、ここを乳管洞という。












 このように構成されている乳腺を超音波上で観察すると、皮膚、浅在筋膜浅層、皮下脂肪層、クーパー靭帯、
乳腺組織、乳腺後脂肪組織、腺在筋膜深層、大胸筋、肋骨、肋間筋が確認できる。


 乳腺組織は全体が高エコー像として描出され、乳腺葉の区別は不可能である。
通常、拡張のない乳管も基本的には連続する管状には観察されないが、
乳管とその周囲の間質が乳腺内に不規則な低エコーとして描出される。


乳腺後脂肪組織は乳腺と腺在筋膜深層との間に存在する脂肪組織で、観察されない場合もあるが
高齢化や肥満によって観察される。










  通常、乳腺の超音波画像は、加齢、授乳経験、肥満、などの背景にある理由により、
  描出される画像に個体差が認められる。




 20歳 
  若い女性の乳腺はエコーレベルが低いことが
  しばしばある。
 24歳
  乳腺の発達が著しく、皮下脂肪層は薄い。
  クーパー靭帯は目立たない場合が多く
  乳腺部は斑紋状を示している。

 39歳
  乳腺は比較的均一な高エコーで描出される。
  脂肪組織、乳腺、クーパー靭帯等も
  明瞭に観察される。
 69歳
  加齢により乳腺組織は退縮し脂肪組織に
  置き換わることにより、乳腺組織は薄い。

 35歳
  肥満により、乳房内は脂肪組織が多く存在し
  脂肪組織と脂肪組織の隙間に乳腺部が存在する。

 38歳
  クーパー靭帯からの後方エコーの減弱を認める。
 44歳
  乳腺内に存在している脂肪組織にクーパー靭帯
  からの後方エコーの減弱がかかっている。
  これにより、通常の脂肪組織よりも低エコーに
  描出され、まるで硬癌のように観察されている。
  








 女性が妊娠してから出産し授乳期が終わるまで、乳腺は明らかな形態の変化をとる。


妊娠初期では腺房や乳管の増生が始まり、それと同時に乳腺内の間質組織は減少を始める。
腺房や乳管の増生、間質組織の減少は出産期にピークを迎えるが、この時乳腺内で間質組織は
ほとんど見られず、増生した腺房や乳管の内部には乳汁で充満する。
離乳後は分泌乳腺の急速な退縮が起こり、1年以内には元の乳腺の状態に戻る場合が多い。


妊娠、授乳期の超音波画像ではその状態により描出される画像が異なり、
その変化が明らかに観察される。


妊娠中に腺房や乳管の増生が起こると、乳腺内の間質組織である低エコー部分が徐々に目立たなくなり
乳管腺房の増生部分が乳腺内の低エコー域として目立つようになる。


それに伴い、徐々にクーパー靭帯は目立たなくなり、観察されないケースも多くなる。
肥満や加齢の度合いにより個体差はあるが、皮下脂肪組織や乳腺後脂肪組織、また浅在筋膜も
観察されにくくなる。


授乳期前後の乳房では乳腺の増生が著しい厚みとして観察され、乳房全体が均一な構造物として観察される。
また乳腺内には乳汁で充満されるため、それに伴う乳管の拡張がしばしば観察される。
拡張した乳管は乳頭に連続性を持ち、内部で乳汁の流動が観察されるときもある。



32歳 妊娠6ヶ月

 乳腺内の間質組織の退縮により乳腺内の低エコー部分は目立たなくなり、乳腺自体が低エコー
 を示している。
 皮下脂肪組織は確認できるが、クーパー靭帯も目立たなくなっている。

  29歳 出産後3ヶ月

   クーパー靭帯や皮下脂肪組織、乳腺後脂肪組織は、はっきりと観察されず
   乳腺全体が著しい厚みを持ちやや低エコーの均一な構造物として観察される。        
                                                 → 画像 左

   乳頭周囲では乳頭に連続する拡張した乳管が多数存在し、内部は無エコーで観察される。
   乳管内の乳汁の流動が観察されるときもある。
                                                 → 画像 右





  参考

    皮膚              skin
    皮下脂肪組織        subcutaneous fat tissue
    浅在筋膜浅層        superficial layer of superficial fascia
    クーパー靭帯         Cooper's ligaments
    乳輪              areola
    乳管口             opening of mammay duct
    乳頭              nipple
    入管洞             lactiferous sinus
    乳管              mammary duct
    乳腺              mammary gland
    乳腺後脂肪組織       retromammary fat tissue
    浅在筋膜深層        deep layer of superficial fascia
    大胸筋             pectoralis major muscle
    肋骨              rib
    肋間筋             intercostal muscle
    乳腺葉             mammary lobe
    乳腺小葉           mammary lobule
    腺房              acinus