超音波検査室 >> 正常例の解剖と画像 >> 甲状腺の解剖と画像
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 甲状腺とその周囲の解剖


 甲状腺は連続性を持った一つの臓器であるが、その構造から右側を右葉と呼び、左側を左葉と呼ぶ。
 通常、甲状腺の右葉は左葉よりも少し大きい場合が多い。
 甲状腺の周囲には深筋膜気管前葉の一部をなす被膜で被われ、甲状腺を気管、および喉頭に
 つなぎ止める役割を果たしている。


 右葉と左葉をつなぐ正中部分を峡部と呼び、峡部から上方に伸びる錐体葉が存在することがある。
 錐体葉は正中よりやや左側に変位していることが多く、錐体葉からさらに上方に繊維性、または筋性の
 帯状構造が伸びている場合があり、これを甲状腺挙筋と呼ぶ。


 甲状腺峡部の前方には胸骨甲状筋、胸骨舌骨筋が存在し、
 甲状腺の右葉、左葉の前外側方に近接する筋肉として、
 胸骨甲状筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、胸鎖乳突筋がある。


 甲状腺両葉の後外側方には頚動脈鞘とよばれる構造物があり、
 その内部には総頚動脈、内頸静脈、迷走神経が走行している。
 また甲状腺の内側方には、喉頭、気管、咽頭、食道が近接しており、気管と食道の間の溝には反回神経が
 走行している。


  




 正常甲状腺の超音波画像


  甲状腺は体表から浅い位置に存在している臓器で、深さは5mm〜30mm程度の範囲内に観察される。
 そのため、超音波検査では高周波の表在プローブを用いて検査をするのが一般的である。


 日本人の甲状腺は全体でも約20g程度の重さしかない。
 甲状腺の長径は約40〜50mm程度、
 厚さ径は約12〜18mm程度、
 幅径は約15〜25mm程度、
 峡部厚は約2〜4mm程度であり、
 これより小さいものを萎縮、大きいものを腫大と考えるが、甲状腺全体の形状、状態を考慮して
 判断する必要がある。


 超音波画像では甲状腺は筋よりもやや高いエコーレベルで、その実質は均一に描出される。
 甲状腺の前面に存在する胸骨舌骨筋と胸骨甲状筋は一塊として観察され、超音波上は前頚筋群と呼ぶ。
 気管の後方は空気による後方陰影が観察され、気管の左側後方に食道が観察される事が多い。


 通常、迷走神経や反回神経は超音波で観察不可能であるが
 甲状腺疾患が原因となり、迷走神経や反回神経へ影響が出ることがあるので
 解剖学的位置を把握しておくことは重要である。



       


 甲状腺の血管支配


 甲状腺は非常に血流に富んでいる臓器で、@上甲状腺動脈、A下甲状腺動脈、Bときに存在する最下甲状腺動脈
 により行われる。
 これらの動脈の終枝は甲状腺表面で互いに吻合し、著明な血管網を形成する。


   @上甲状腺動脈
        上甲状腺動脈は外頚動脈からの枝として生じ、下行して甲状腺両葉の上極部に達する。

   A下甲状腺動脈
        下甲状腺動脈は鎖骨下動脈から分枝した甲状頚動脈からの枝として生じ、
        甲状腺の後方を上行して輪状軟骨の高さまで到る。
        そののち、下内側方に進路を転じて甲状腺の下極に達するため
        下甲状腺動脈は左右反回神経に沿うように走行する。

   B最下甲状腺動脈
        最下甲状腺動脈が存在するときは、腕頭動脈、あるいは大動脈弓から直接分枝することが多い。
        この動脈は気管前面を上行して甲状腺峡部に達する。



 甲状腺の静脈をなすものは、@上甲状腺静脈、A中甲状腺静脈、B下甲状腺静脈である。


   @上甲状腺静脈
        内頸静脈に直接流入する。


   A中甲状腺静脈
        内頸静脈に直接流入する。


   B下甲状腺静脈
        下甲状腺静脈は甲状腺の下方部分および峡部からの静脈血を受ける。
        左右のした甲状腺静脈は気管前面を下行しながら互いに吻合し左腕頭静脈に流入する。



         


 甲状腺ホルモンの分泌について


  甲状腺の最小単位は甲状腺濾胞である。
 甲状腺濾胞は複数の濾胞上皮細胞が周囲を取り囲むようにして甲状腺濾胞の壁の役割を果たしており
 この濾胞上皮細胞により、甲状腺ホルモンの合成、分泌が行われる。
 濾胞上皮細胞内にはサイログロブリンと呼ばれる蛋白が合成され、コロイドとして蓄積されているが
 これに血中からヨードを取り込み合成することによって、甲状腺ホルモンが分泌される。


 甲状腺ホルモンは主に全身の細胞の代謝率を調節するホルモンで、
 トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)の2つがある。
 トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)の違いは、血中から取り込み付加されたヨードの数で
 T3には3つのヨードが、T4には4つのヨードが付加されている。


 甲状腺ホルモンは下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)により分泌量が調整されている。
 甲状腺刺激ホルモン(TSH)は甲状腺の濾胞細胞膜にあるTSH受容体と結合し
 甲状腺ホルモンの合成、分泌が促進される。


 甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌は、視床下部由来の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)に
 刺激されることで増加し、結果的に甲状腺ホルモンが血中に分泌される。
 血中の甲状腺ホルモンが多くなってくると、そのネガティブフィードバック作用によって
 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の分泌量が抑えられ、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が抑えられ
 その結果、甲状腺ホルモンの分泌も抑えられる。



視床下部 下垂体前葉 甲状腺
TRH 分泌

促進
TSH 分泌

促進
T3、T4
分泌

抑制
分泌

抑制





 甲状腺の内分泌学的、および免疫学的検査


 甲状腺疾患それぞれに特徴的な超音波所見が観察される場合があるが
 多くの甲状腺疾患の場合、超音波検査だけで疾患を特定することが困難である。
 そのため、内分泌学的、および免疫学的検査と合わせて、甲状腺疾患の鑑別を進めるのが一般的である。


 a) 血中サイロキシン(thyroxine:T4)、およびトリヨードサイロニン(triiyodothyronine:T3)

   甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンの大部分は T4 であるが、その大部分はサイロキシン結合蛋白と結合し
   血中の遊離型T4(FreeT4:以下FT4)は全体の0.03%程度である。
   T3 も大部分がサイロキシン結合蛋白と結合しており、遊離型T3(FreeT3:以下FT3)は0.3%程度である。

   一般的な甲状腺ホルモン測定としては、FT4、FT3、の測定が行われる場合が多い。


 b) 甲状腺刺激ホルモン(TSH)

   甲状腺刺激ホルモン(TSH)は下垂体前葉から分泌されるが、これは甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン
   によって調節されている。

   一般的に甲状腺機能亢進症ではTSHが低値を、甲状腺機能低下症ではTSHが高値を示す。
   また、FT3、FT4、が高値を示しているにもかかわらず、TSHが抑制されていないものはTSH不適切分泌症候群
   と呼ばれ、下垂体TSH産生腫瘍、甲状腺ホルモン不応症(Refetoff症候群)などがあるが
   極めて稀である。

   逆にFT3、FT4、が低値であるにもかかわらず、TSHも低値を示す場合は、
   視床下部、下垂体異常によるTSH分泌障害による甲状腺機能低下症にみられる。


 c) サイログロブリン(thyroglobulin:Tg)

   甲状腺濾胞上皮細胞から分泌される糖蛋白で、甲状腺癌の転移の確定に用いられるほか
   甲状腺濾胞の破壊が起こる亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎でも高値を示す。


 d) TSH受容体抗体(TRAb)

   TRAbは甲状腺TSH受容体に対する自己抗体である。
   TSH受容体抗体(TRAb)には、
   甲状腺刺激抗体(thyroid stimulation antibody:TSAb)と
   甲状腺刺激遮断抗体(thyroid blocking antibody:TSBAb)の2つがある。

   代表的な疾患として、バセドウ病では TSAb > TSBAb であり、
   橋本病では TSAb が著明に減少し、TSBAb が増加する。


  一般的な甲状腺の内分泌学的、および免疫学的検査の進め方

FT4,FT3 ↑
TSH ↓
の場合
バセドウ病 TRAb・TSAb(+)  TC↓、ALP↑
亜急性甲状腺炎 TRAb・TSAb(-)  赤沈↑、CRP↑
無痛性甲状腺炎 TRAb・TSAb(-)
出産後自己免疫症候群 TRAb・TSAb(-)
Plummer病 TRAb・TSAb(-)  シンチグラム

FT4,FT3 ↓
TSH ↑
の場合
原発性甲状腺機能低下症 サイロイドテスト (TGHA) (TgAb) (+)
マイクロゾームテスト (+)
橋本病

FT4,FT3 
TSH 
に異常が無い場合
腺腫、癌腫、肉腫 画像診断
腫瘍マーカー、生検
嚢胞、転移巣 サイログロブリン