超音波検査室 >> 実際の症例 >> 上腹部領域 >> 肝臓
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   比較的大きく限局的に観察される膿瘍と、小さくて散在性に観察される膿瘍がある。


   超音波検査上、肝膿瘍はその時期によって超音波所見が異なるのが特徴で
    多彩なパターンで描出される為、肝腫瘍等との鑑別が難しいことも少なくない。


   肝膿瘍の内部エコーは、初期には高エコーで描出されるものもあり、
    膿瘍内の融解壊死に伴い低エコー領域が増え
    膿瘍内のエコーレベルは不均一に描出されるようになる。


   ガス産生菌による膿瘍内ガスが観察され、点状高エコーとして描出される事もある。


   膿瘍の辺縁は不整に描出されることが多い。




  肝臓に何らかの原因で感染が生じ、その結果、肝に膿瘍を形成した病態をいい、中高年の男性に多い。
 感染の原因に関係なく、膿瘍の数により治療や予後が違ってくることから
 臨床上では一般的に、限局性(孤立性)肝膿瘍と多発性肝膿瘍に大別される。


 肝膿瘍は、さらに内部構造の違いにより単房性と多房性に分けられ、
 また、発生する部位により、肝被膜下膿瘍、肝内膿瘍と分けられる。


 限局性肝膿瘍は比較的大きくても治療に反応する事が多く、予後も良好であるが
 多発性肝膿瘍の場合は難治性となる場合が多い。




  肝膿瘍は、その感染経路から

      1、 経門脈性
      2、 経動脈性
      3、 経胆道性
      4、 連続性
      5、 その他

                     に分けられる。


経門脈性 腹腔内や骨盤内臓器の化膿性疾患(虫垂炎、憩室炎 etc) やCrohn(クローン)病、潰瘍性大腸炎などの炎症が原因となる。炎症が門脈に及び、化膿性血栓が形成され、それが血行性に肝臓に達し、Glisson(グリソン)鞘で化膿性門脈炎となり膿瘍を形成する。
血栓の定着様式によって、膿瘍の数、大きさ、形態が決定されるが、限局性であることが多い。
経動脈性 敗血症の部分像として観察される肝膿瘍がほとんどであり、
膿瘍は比較的小さいものが多発的に観察される事が多い。
経胆道性 総胆管結石、肝内結石、膵炎、胆嚢炎、胆道の閉塞をきたす病変による上行性感染に起因するもので、胆管炎性膿瘍とも呼ばれる。うっ滞した胆管に感染が生じ、胆管上皮が破壊され内腔の膿汁が肝組織に流出し化膿性病巣を形成する。肝組織は融解破壊に陥り小膿瘍が胆管に沿って多発するため、治療では予後不良な場合がある。
連続性 胆嚢、胃、十二指腸、腎臓、副腎、膵臓、大腸、等の肝周囲臓器の炎症の波及、悪性腫瘍の直接浸潤によって生じる肝膿瘍をいう。
その他 上記にあてはまらない細菌性肝膿瘍をいう。
医療行為によるものや、外傷に伴う細菌性肝膿瘍などがある。




  肝膿瘍が存在する症例では、
 38℃を超える発熱、右上腹部痛、肝腫大、全身倦怠感、食欲不振を認めることが多く、
 膿瘍が横隔膜に接している場合では、胸痛や胸水を認める場合もある。
 胆道性肝膿瘍では黄疸を認めることもある。


 限局性肝膿瘍の発症直後は症状や検査値の異常が軽度であることが多いが、
 多発性肝膿瘍では一般的に急性の発症をとり、症状も激しく
 原因となる感染巣の症状が前面にでて、肝膿瘍を見逃しやすいので注意が必要になる。



 肝膿瘍が存在する場合、
 血液生化学で炎症の存在を反映して、白血球増多、赤沈亢進、CRPの上昇がほぼ全例で認められる。
 肝機能検査では ALP、AST、ALT、ビリルビンが上昇する事があるが、軽度の異常しか示さない場合も多い。





 肝膿瘍の診断では、腹部超音波検査と CT検査の重要性は高く、画像所見からの診断も可能である。


 超音波検査上、肝膿瘍はその時期によって超音波所見が異なるのが特徴である。
 膿瘍の辺縁は不整な場合が多く、肝膿瘍の内部エコーは、初期には高エコーで描出されるものもあり、
 膿瘍内の融解壊死に伴い低エコー領域が増え膿瘍内のエコーレベルは不均一に描出されるようになる。
 ガス産生菌による膿瘍内ガスが観察され、点状高エコーとして描出される事もある。


 膿瘍が融解壊死に陥ってくれば、内部に不均一な嚢胞様エコーを伴って観察されるようになるが
 完全な無エコーで観察される例は少なく、点状の内部エコーを伴う例が多い。
 膿瘍壁は比較的厚く観察される例が多く、
 周囲の肝実質にに炎症の波及を示唆する淡い高エコー領域が観察される事もある。



 肝膿瘍は多彩な超音波像を示す為、画像上、転移性肝癌、肝嚢胞性腫瘤、びまん型、塊状型肝細胞癌などの
 肝腫瘍との鑑別が困難な場合があり、検査所見や臨床所見と合わせて超音波診断を進めていく。




   腎細胞癌術後に観察された肝膿瘍

   直腸癌術後に観察された肝膿瘍

   膵頭部癌術後に観察された肝膿瘍

   急性虫垂炎術後に観察された肝膿瘍