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   肉眼的に 結節型(nodular type) 塊状型(massive type) び漫型(diffuse type)
     の3つに分けられ、どの型に当てはまるかによって所見は異なってくる。



 結節型の超音波像 イメージ⇒


   境界明瞭な腫瘤像として描出され、形状は腫瘤が小さければ(約2cm以下)類円形が多く、
    腫瘤がある程度の大きさ(約2cm以上)になると、不整形を呈する例が多い。


   腫瘤の大きさが約2cmまでの場合、内部エコーは低エコーで均一に描出される事が多く
    腫瘤の大きさが2〜3cm以上になると、肝細胞癌の典型例のモザイクパターンとして
    描出される事が多い。


   腫瘤がある程度の大きさ(約2cm) 以上になると、繊維性皮膜 (halo) を伴う例が多い。


   腫瘤の大きさが約5cm以上になってくると、しばしば塊状型に移行する。





 塊状型の超音波像 イメージ⇒


   腫瘤の輪郭はある程度識別可能であるが、部分的に境界が不明瞭に観察される。


   腫瘤が大きくなってもモザイクパターンを示さない例が多く、
    所見として転移性肝癌と類似することも少なくない。


   10%前後で、肝静脈、胆管 への脈管内進展が認められる。


   病巣の進展範囲に門脈が存在すれば、高率で門脈内進展を伴う。


   繊維性皮膜 (halo)は無い、もしくは部分的に破綻している。




 びまん型の超音波像 イメージ⇒


   癌病巣が小さい場合、再生結節を伴う肝硬変と超音波画像が酷似することが多く
    病巣の存在自体を識別する事も困難な場合が少なくない。



   腫瘤は全体的にびまん性に存在する為、境界は不明瞭で輪郭は識別困難である。


   病巣の進展範囲に門脈が存在すれば、高率で門脈内進展を伴う。







  肝細胞癌は、正常肝からはほとんど発生せず、80%が肝硬変から、10%前後は慢性肝炎から発生する
  上皮性悪性腫瘍である。



  肉眼的には 結節型(nodu;ar type)、 塊状型(massive type)、 びまん型(diffuse type)、に分類され
  組織分類としては、高分化型、中分化型、低分化型、未分化型に分けられる。



 肝細胞癌の形状


  肝細胞癌の形状は、塊状型、びまん型の場合は、発症当初から不整形を示す事が多く、
  また、塊状型、びまん型も不明瞭な部分を有する為、腫瘤が小さいと識別が困難な場合が多い。



  結節型では、腫瘤径が約2cmまでは多くが円形、もしくは類円形を呈する。
  腫瘤径が2cmを超えた頃から、徐々に不整形になっていく事が多い。



 肝細胞癌の境界 (辺縁低エコー帯=halo)


  肝細胞癌の辺縁はしばしば halo=辺縁低エコー帯と呼ばれる、腫瘤周囲が低エコーで囲まれる
  低エコー帯が認められる。



  形成機序は、腫瘤が大きくなっていく過程で周囲の正常肝組織を圧排し、癌組織に圧排された部分は
  肝組織の萎縮や消失を起こし、線維成分が凝集された結果に現れると考えられている。



  塊状型やびまん型の肝細胞癌では、境界は不明瞭でありhaloは同定されないことが多い。



  結節型肝細胞癌では、腫瘤径1cmまでは辺縁低エコー帯は観察されない。
  腫瘤径が1〜2cmでは、組織像にて60%程度に皮膜を有すると言われているが
  皮膜自体が非常に薄い為、超音波検査で同定することは困難な場合が多く
  特に小さな腫瘤の場合、辺縁低エコー帯が無いから、といって肝細胞癌の否定にはならない。



  腫瘤径が増大するに従って辺縁低エコー帯も明瞭となり、厚みも厚くなってくる場合が多い。
  肝細胞癌の辺縁低エコー体は薄く(1mm前後)鮮明である事が知られている。



  転移性肝癌、胆管細胞癌でも腫瘤辺縁低エコー帯が認められる場合があるが、
  肝細胞癌のものと比較すると、辺縁低エコー帯の厚みは厚く、境界は不明瞭である事が多い。



 肝細胞癌の内部エコー


  一般的に肝細胞癌の内部エコーは、腫瘤径が2cm以下のときは低エコーで均一な場合が多く
  2cm以上に大きくなると、部分ごとに分化度の違いが出てくることにより、高エコー部と低エコー部、
  または肝と等エコー部などが混在する事があり、モザイクパターンといって肝細胞癌の
  特徴的な超音波所見とされている。

  (モザイクパターンは 「tumor in tumor」 あるいは 「nodule in nodule」 とも呼ばれる



  しかし、頻度は多くはないが高エコーを示す腫瘤径2cm以下の肝細胞癌も存在する。
  腫瘤径が小さい時から高分化型の肝細胞癌であったり、脂肪変性を伴う例も少なくはない。



  特に、脂肪変性を伴い、高分化型の腫瘤径2cm以下の肝細胞癌では
  肝海綿状血管腫との鑑別が困難である程、エコーレベルが高い場合が多い。



  また、腫瘤内部に壊死による変性を伴う例もあり、その場合、液化壊死と中心壊死に分けられる。



  液化壊死は、壊死した部分が無エコーで描出され、時として腫瘤内に散在的に認められる。



  中心壊死は、腫瘤の中心に比較的大きい無エコー領域が認められる。



 肝細胞癌の後方エコー、側方エコー


  一般的には肝細胞癌の後方エコーは増強する。



  しかし、プローブのあて方や、肝細胞癌のタイプや分化度によって後方エコーは、変化がなかったり
  減弱するケースもある。



  絶対的ではないが、肝細胞癌では側方エコーが認められ、転移性肝癌や肝海綿状血管腫では
  側方エコーが認められない傾向にある。



 肝輪郭部に腫瘤がある場合


  肝辺縁の近くに肝細胞癌、特に結節型の肝細胞癌が存在する場合、
  腫瘤の成長に伴い、肝外縁のラインが肝腫瘤によって膨隆するように観察される事がある。



  これを hump sign と呼ぶ。(hump とは日本語で「こぶ」のこと)



  腫瘤が浸潤性で、なおかつある程度の硬度を持っている場合に「hump sign」は観察される。



 門脈内腫瘍塞栓


  肝細胞癌が進行すると、しばしば門脈内へ腫瘍塞栓として浸潤が認められる。



  特に塊状型肝細胞癌やびまん型肝細胞癌では、門脈走行域に進展すると
  高率に門脈内腫瘍塞栓が認められることが知られている。



  びまん型肝細胞癌では、超音波画像として識別困難である為、
  門脈内腫瘍塞栓を認めて、はじめてびまん型肝細胞癌が指摘される場合もある。



  鑑別として、時に消化管悪性腫瘍からの転移性肝癌は、門脈を経由した血行性転移が認められる為
  転移性肝細胞癌でも門脈内腫瘍塞栓が認められることがある。



  門脈内腫瘍塞栓が門脈でも、太い門脈を塞栓により完全閉塞するケースでは
  門脈血流の代償性の副側血行路として、門脈周囲海綿状静脈そう が門脈周囲に細い脈管構造として
  観察される事がある。








  このように、肝細胞癌の特徴をいろいろ調べて書いてみましたが、
  結局のところ、「これが観察できれば絶対に肝細胞癌である」という情報は存在しない事がわかりました。



  つまり、肝細胞癌が疑われる腫瘤性病変を見つけたときには、上記のような情報を超音波上で観察して
  統合的に推測する事が大事である、と考えられます。



  上記の情報を充分理解し、転移性肝癌や胆管細胞癌、肝海綿状血管腫などとの鑑別ポイントを考えながら
  経験をつんでいく事が、鑑別診断の正確性を上げる一番の方法ではないでしょうか。




  結節型肝細胞癌症例

    典型的な画像が得られた結節型肝細胞癌

    短期間で成長性が認められた結節型肝細胞癌

    非常に大きな結節型肝細胞癌

    それぞれ違う顔を見せた多発性肝細胞癌 


  塊状型肝細胞癌症例

   門脈内進展を認めた大きな肝細胞癌 




  びまん型肝細胞癌症例

    広範囲に門脈内進展が観察された肝細胞癌