超音波検査室 >> 実際の症例 >> 上腹部領域 >> 肝臓
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 75歳 女性


  今まで、あまり病院にかかったことは無い方で、
  全身倦怠感を訴え、近隣の病院にかかったところ肝臓に腫瘤を指摘され当院に紹介となりました。


  依頼表には「肝腫瘤精査目的」としか書いておらず、血液エータや他の画像検査も行われていません。





  まず、肝S8に腫瘤を見つけました。



  腫瘤は分葉形の形を示していますが、内部エコーは不均一で一目でモザイクパターンだな
  と思いました。
  この時点で、早くも私の中では肝細胞癌が最も疑われる腫瘤になりました。



  初めは、慢性肝炎や肝硬変の鑑別ができれば、肝細胞癌の鑑別も容易になるかな?
  なんて思っていたので、私にとってモザイクパターンを最初に見つけたというのは
  ラッキーでした。




  続いて、肝のS4にも腫瘤を見つけました。



  S8の腫瘤とは違い、比較的均一な低エコーの腫瘤として描出されていますが
  hump sign が観察されているので、悪性腫瘍を最初から疑いました。



  画像を見てもらえばわかりますが、非常に体表に近い場所に存在している腫瘤です。
  そのことに気が付いた私は、すぐに高周波のプローブに持ち替えました。



  そして、得られたドップラー画像が下です。






  これもまた、肝細胞癌の特徴的なドップラー画像を示しています。
  よく教科書には、肝細胞癌の血流は「バスケットパターン」といって
  腫瘤周囲に血流が豊富で、腫瘤周囲の血管から内部を栄養する血管が観察される
  と書いてあります。



  綺麗に描出できれば、入れ物(バスケット)のように観察されるので、この名前がついているのですが
  この画像を見たときに、完全なるバスケットバターンだな。。。と考えました。



  もう一度、肝の上極から観察してみると、S8にもう一つ腫瘤を見つけました。
  (一回目では気が付きませんでした。よくよく考えると見逃しの危険性がありました。危ない!!)




 この腫瘤は、この前に見つけた2つの腫瘤とはまた違った印象の腫瘤でした。



 エコーレベルはほとんど肝と同じですが、内部は不均一に描出され後方エコーを伴っています。
 後方エコーを伴うという事は、超音波の原理上肝よりも複雑な構造なのですが、
 そういう意味で、もう一度目を凝らしてみてみると、この腫瘤もモザイクパターンなのではないかな?
 と思えました。



 最後に左葉を走査していた時です。



またまた出てきました。

4つ目の腫瘤です。



すでに3つも肝細胞癌であろう腫瘤を
見つけているので

いつもなら、肝血管腫も考えるのですが
これも肝細胞癌なんじゃないの?
という先入観を持っていました。



この腫瘤も体表に近い位置にあったので、お得意の高周波プローブを使用してみました。



高周波のプローブを使用しなくても、じっくり観察すればこのような腫瘤の顔を出す事はできたでしょう。



この画像では、単に一塊の腫瘤ではなく、分節状にそれぞれが発育する腫瘤のように観察されています。
うっすらと、腫瘤周囲の低エコー帯が観察されるような気がしますがどうでしょう?
over reading ですかね?







このように、4つの腫瘤が認められました。



この後、脾腫や微量の腹水、肝門部リンパ節の腫大も認められ、
慢性肝炎から肝硬変に移行し、肝細胞癌が発生したのではないか、と考えました。



しかし、1つの肝臓の中にそれぞれ描出のされ方の違う腫瘤を観察したのは私は初めてです。
(2〜3個くらいはありましたが・・・)



しかも、それぞれが20mm以上に成長し、ほぼ同じ大きさに成長している事を考えると
きっと、比較的同じ時期に発生した肝細胞癌ではないでしょうか?