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 80歳 男性


  10年前に交通外傷により急性硬膜下血腫で手術をし、その後脳外科外来で通院していた患者様です。



  数年前に検査で顕微鏡的血尿が指摘されていたそうですが、ほったらかしで
  患者様は外来にしばらく来なかったそうです。



  そして、3年程前になって頻回に起こる肉眼的血尿で外来にやってきたそうです。
  その時に撮られた超音波検査画像です。





  腎臓に大きな腫瘤性病変(この時の計測値で 56×62×58mm程でした)が認められています。
  腫瘤は腎皮質、腎髄質を巻き込んで、腎盂から腎外に連続しています。



  ドップラー画像もありますが、わかりづらいのでここでは載せませんが
  そのドップラー画像で、腎外に出ている腫瘍部分は腎静脈に進展した腫瘍部分が疑われていました。



  最終的な超音波レポートは、腎細胞癌で腎静脈への進展を認める、とありました。



  もちろん、この直後に手術が行われました。
  カルテを見ると、結果はやはり腎細胞癌で、腎静脈への進展、尿管へも一部進展、が認められたそうです。




  その後、2年後の腹部超音波検査の画像です。
  (患者様は術後退院してから、2年間一度も外来に来なかったそうです)




  肝左葉外側区 S3 に大きな腫瘤性病変 ( 55×48×70mm程 ) が認められました。



  腫瘍のエコーレベルは肝と同等か、やや低く、hump sign を伴って大きく成長しています。 
  また、腫瘤内部には血管構造のような細長く描出される無エコーが認められましたので
  ドップラーをあててみました。



  門脈左外側下区域枝 P3 が
  そのまま、腫瘤内へと走行していきます。



  つまり 門脈の枝(P3) の血流は
  そっくりそのまま、腫瘤を栄養していると
  考えられました。



  それだけ血流が豊富なら
  ここまで多きく育つのも納得できます。







 そして、左肝静脈も腫瘤の内部から走行していました。
 腫瘤は左肝静脈に直接血流を排出している様子がよくわかります。



 つまり、この腫瘤は門脈から栄養を豊富に取り入れ、大量に流入してくる血液の排出先も確保する事によって
 非常に血流が豊富で大きな腫瘤へと成長したと予想されます。



 肝臓に嚢胞があるくらいで、他に転移を疑うような腫瘤は認められませんでしたが、



   ・ 大きいわりに比較的均一な腫瘤として描出される事

   ・ 腫瘤が肝外へ hump sign を伴って成長している事

   ・ 門脈や肝静脈が流入しているが、血管内への明らかな進展が認められない事

   ・ 2年前に腎細胞癌を手術している事

   ・ 肝炎や肝硬変といった肝細胞癌を疑わせる、ベースとなる疾患が無い事


 などの理由からレポートには、腎細胞癌からの転移性肝腫瘍、と報告しました。