超音波検査室 >> 実際の症例 >> 上腹部領域 >> 肝臓
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 38歳 女性


  6年前に乳癌手術を行った患者様です。
  ( 過去の画像は古くて残っていませんでしたが、硬癌だったようです )



  術後2〜3年は、術後の転移検索も6ヶ月おきに受けていたようですが、
  ここ2〜3年は、病院に来なくなり転移検索を行っていなかったそうです。



  「ここ数ヶ月で腹痛、嘔吐、全身倦怠感を感じるようになり、久しぶりに病院にやってきた。」
  と話す患者様の腹部は、検査をする前から腹水が溜まっていることが一目瞭然でした。








肝右葉に約120×100×100mm程の

腫瘤が観察されました。


腫瘤の境界は明瞭で、不整形に観察され、

内部のエコーレベルは非常に不均一でした。








肋間走査で観察すると、

腫瘤が存在している部分の肝周囲の形状が

非常に不整に観察される事に気が付きました。



中肝静脈は問題なかったのですが、

右肝静脈、門脈本幹、で脈管壁のエコーレベルの上昇が

認められ、脈管への浸潤と、それに伴う炎症が存在する

と考えました。



ドップラーで血流を確認してみると

一応血流は保たれていましたが、

血管壁が高エコーに描出される部位と

そうでない部位では、明らかな径の違い

が認められました。









この画像では、胆嚢の短軸が観察されています。

胆嚢壁は著明に肥厚して、内腔は虚脱しています。



転移性肝癌の胆嚢への浸潤が示唆されています。



下部胆管などで拡張は認められませんでした。









腹水が多く観察される事からも、

リンパ節への転移や腹膜播種を疑い

下腹部もあわせた広い範囲の走査を行いましたが、

腹水以外の著明な異常所見は認められませんでした。







 ・ 既往歴に乳癌があること

 ・ 肝内の腫瘤は非常に大きく周囲の脈管を巻き込んでいるわりに、浸潤の程度が軽いこと

 ・ 腫瘤が存在している肝周囲の形状が非常に不整で、癌臍と考えられること


  などの超音波所見から、この腫瘍は乳癌による転移性肝腫瘍であると判断しました。




 しかし、この患者様はまだ38歳。

 ちゃんと腹部の転移検索をしている時には、肝臓内に腫瘤性病変が認められなかったのに

 少し病院に来るのをサボった2〜3年で転移性肝癌が発生して、ここまで大きくなるとは

 その成長のスピードには驚きだし、本当に皮肉な話だと思います。