超音波検査室 >> 実際の症例 >> 上腹部領域 >> 肝臓
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 58歳 男性


  会社検診で胃に異常を指摘されて来院された患者様です。
  胃癌の可能性があるらしく、精査の為に沢山の検査の予定が入っていましたが、
  この日は、手始めに超音波検査とCT検査が行われました。



  当院の外来にかかるは初めてだったらしいのですが、近医でB型慢性肝炎の follow をしているそうです。





  肝臓 S8 に大きな腫瘤が認められます。



  大きさは 約28×24×26mmでした。
  腫瘤周囲には低エコー帯(halo)が観察でき、内部エコーはほぼ肝と同程度のエコーで描出されます。
  形状はやや不整形でを示します。



  胃癌があるかもしれない、という事がわかっていましたので「転移性肝癌」ではないか?と思いましたが、
  既往歴にB型慢性肝炎もあるので、「肝細胞癌」の可能性もありました。






  ドップラーでも鑑別できるような有意な情報は得られませんでした。
  右画像は胃を観察した画像ですが、胃の前庭部に部分的に低エコーで描出される胃壁の肥厚を認めました。



  この低エコー、肥厚部は胃癌を見ていると判断しました。



  この時点で私は自問自答をしながら、この腫瘍が何であるかいろいろ考えました。


  ・ 腫瘤は単発性である ⇒ 転移性肝癌でも肝細胞癌でもいいのですが、
                      転移性肝癌は多発することが多いので、印象としては肝細胞癌である。


  ・ 腫瘤周囲の低エコー帯の厚みが薄い ⇒ 肝細胞癌と転移性肝癌の辺縁低エコー帯を比較すると
                                転移性肝癌の場合は低エコー帯の厚みが厚いことが多く
                                肝細胞癌の低エコー帯は薄くて均一な厚さのことが多い。
                                印象としては肝細胞癌である。


  ・ 著明な血流信号が得られない ⇒ 肝細胞癌は非常に血流の豊富な腫瘤であることが多いのに、
                          ドップラーでそれほど信号が得られず、印象としては転移性肝癌である。


  ・ モザイクパターンを示さない ⇒ 腫瘤の大きさは25mmを超えているので、肝細胞癌であれば
                         モザイクパターンで描出されてもいい大きさです。
                         内部エコーは比較的均一であり、印象としては転移性肝癌である。



  いろいろ考えてみましたが、
  結局「胃癌」がある、という理由だけでレポートには「転移性肝腫瘍疑い、肝細胞癌否定できず」としました。




  その後、いろいろな検査を重ねた後、「胃癌」と「転移性肝癌」で確定診断がついた症例です。



  確定診断がついた後に、もう一度超音波画像を見て確認したり、いろいろ調べてみたりしましたが
  やはり、超音波上だけでは、「肝細胞癌」と「転移性肝癌」との鑑別は困難であると思いました。



  ん〜、いろいろ考えましたが、超音波で鑑別できないのは、ちょっと悔しい。