超音波検査室 >> 実際の症例 >> 上腹部領域 >> 膵臓
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   炎症部分の膵は腫大し、実質のエコーレベルは低下する。


   膵の辺縁は不整に観察され、重症例では膵実質が不均一に観察される。


   急性膵炎では膵管は拡張していない場合が多い。


   急性膵炎の経過観察中に仮性膵嚢胞が認められることもある。


   膵周囲に滲出液の貯留を認めることがあり、その滲出液の存在する場所によって
               腸閉塞、腎や脾の炎症、腹水、左胸水、が認められることがある。





  急性膵炎は、腺房細胞で産生、貯蔵された膵酵素が、何らかの原因によって活性化され、
 それらが膵臓の内部及び周囲を自己消化することによって、急性変化を生じた病態であり、
 軽症、中等症、、重症、に分類される。


 軽症ではほぼ死亡例は無く、中等症での死亡率は約2%と低い。
 しかし、重症例の死亡率は30%と高く、毎年500~600人が急性膵炎で死亡しているといわれている。


 男女比はほぼ 2:1で男性に多く発症し、その成因は約40%がアルコール性、約20%が胆石性、
 その他、特定の原因が認められない突発性が25%ほどあり、腹部外傷、手術、膵胆管合流異常、高脂血症、
 感染、薬剤性などがあげられる。


 膵臓では普段から様々な栄養素を分解する消化酵素を不活化状態で腺房細胞に保存しているが、
 何らかの原因で膵内で消化酵素が連鎖的に活性化されて、膵、膵周囲臓器を自己消化する化学的炎症が
 急性膵炎の本態である。


 膵の炎症が進展し、大量の活性化膵酵素が膵内や膵周囲、腹腔内に広がると、これらは血中に移行する。
 もともと血中には膵酵素に対する防御作用を持った蛋白が存在しているが、
 その防御作用を超える大量の膵酵素が血中に流れ込むと、膵から離れた重要臓器にも影響が及び
 多臓器障害を起こして全身疾患の様相を呈することもあり、これが重症急性膵炎の特徴であり
 高率な致死率経過をとる。


 典型例では上腹部の激痛発作で発症する事が多く、疼痛は徐々に増強して数時間でピークに達し
 悪心、嘔吐を高頻度に伴う。
 発症2日以内に腹痛は95%以上に認められ、心窩部、右、左季肋部の順に多い。背部痛は40~50%にみられる。
 急性無痛性膵炎の頻度は1~2%で、高齢者に多く注意を要する。


 軽症例の予後は良好で、2~5日で腹痛は軽減し、2~3週で自他覚的にもほぼ改善する。
 膵機能障害も残されていない場合が多い。


 1988年に報告された厚生省難治性膵疾患調査研究班の全国集計によれば
 重症急性膵炎の死因は、循環不全37%、腎不全34%、呼吸不全31%、心不全23%、DIC17%
 消化管出血15%、肝不全15%、敗血症13%、腹腔内出血8%となっている。
 胆石症に比べ、アルコール性で重症例が多い。


 急性膵炎の超音波画像としては
 直接所見として、膵腫大、膵辺縁の不整化、膵実質のエコーレベルの低下が観察される。
 重症膵炎では、膵実質は出血や壊死に伴い不均一なエコーレベルで描出されることもある。


 急性膵炎では膵管の拡張は稀で、あっても軽度である場合が多い。
 もし、膵管の不整拡張が認められれば、慢性膵炎の急性増悪が疑われる。


 間接所見として、膵周囲の滲出液(しんしゅつえき)貯留が、膵周囲や腹腔内に観察される事もある。
 またこの滲出液により、腸閉塞が起こったり、腎や脾臓に炎症が及び観察される事があり
 後腹膜腔に多量の滲出液が認められる場合には、腹水、左胸水が存在する場合もある。
 急性膵炎の経過観察中に仮性膵嚢胞が認められることもある。


 軽症例では画像診断でも異常を指摘できない事も多い。
 発症前の正常膵に萎縮傾向やエコーレベルの上昇が認められる場合は、特にその判定は困難である。






    全く自覚症状の無かった急性膵炎

    滲出液を伴った急性膵炎

    著明な膵腫大を認めた急性膵炎