超音波検査室 >> 実際の症例 >> 上腹部領域 >> 膵臓
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  55歳 男性


  以前から胆石症で経過観察を続けていた患者様です。
 普段から6ヶ月ごとの腹部超音波検査で経過観察を行っていましたが、
 腹部に痛みを感じたために、急遽外来を受診し、超音波検査を施行する事になりました。





 胆嚢を観察してみると、以前から指摘されていた胆嚢結石が複数観察されました。
いずれも大きさは約1.5〜2cm程度でした。


前回までの超音波所見を見ると胆嚢結石は認められていましたが、上の画像のような胆嚢壁の肥厚は
認められていませんでした。
今回の検査では、胆嚢壁の肥厚と軽度の胆嚢の萎縮が認められることから、慢性胆嚢炎を併発している
と考えられました。


急性胆嚢炎にはなっていませんでしたが、炎症を繰り返して慢性胆嚢炎になったことが予想された為
症状も一致するので、これで腹部の検査は終了・・・と思いながら、最後に膵臓を観察しました。





すると、膵鉤部に限局して低エコーで描出される部分を見つけました。
簡単に観察すると見逃しそうでしたが、depthを浅くし画面を大きく表示すると結構はっきりと描出されてきます。


最初は腫瘤を疑いました。
大きさは約21×22mm程度で、膵実質内に限局して描出される腫瘤様陰影です。
腫瘤の境界は比較的明瞭で内部はやや不均一に描出されます。
主膵管の拡張は認められず、載せていませんが、ドップラーにて血流信号は認められませんでした。


私は漿液嚢胞線種を疑いましたが、ひとつ疑問に思いました。
今まで何度となく半年ごとに超音波検査を行っているのに、今まで一度も膵の異常については指摘されていません。
確かに目立つ病変ではないにしても、これだけの大きさの腫瘤様陰影を見逃してきたとも考えにくい、と思いました。



もし、膵臓の病変は今回初めて出現したとすると、漿液嚢胞線種等の腫瘤性病変が数ヶ月で20mm以上に
成長したということになります。



どのように報告書を書こうか悩み、「とりあえず、胆石、胆嚢炎についてだけでも書こう」と思い
胆石、胆嚢炎のレポートを書いているときに、慢性膵炎の可能性に気が付きました。



画像上、明らかな膵炎の所見は無いが、胆石、胆嚢炎に伴って経度の膵炎が起こっていてもおかしくはない。
そして軽度の膵炎が慢性膵炎だったとすると、腫瘤形成性膵炎でも良いのではないか、と考えました。



そこで、レポートには
  「膵臓に明らかな炎症の所見は認められないが、描出されている腫瘤様陰影の鑑別診断として
     漿液嚢胞線種、腫瘤形成性膵炎、があげられ、膵癌の否定もできない。」

 と、なんとも中途半端なレポートを作成したのが、今から約1年前です。




すっかり忘れていましたが、ちょっとしたきっかけで思い出しカルテを調べてみると、
手術等の外科的処置はされておらず、経過観察をしているようでした。



血液データの所見としては、アミラーゼの軽度上昇は認めたものの、膵炎を積極的に疑うほどではなく、
経過観察で3ヶ月後、6ヵ月後、12ヵ月後、と行われた3回の腹部超音波検査でも
膵頭部に描出される腫瘤様陰影の形状、大きさに変化は認められていませんでした。



経過観察をして、低エコー部分の大きさや形状に変化が認められず、
画像は載せていませんが、CTやMRで膵頭部に明らかな異常所見が描出されておらず、
臨床状態も特に異常なく良好に推移している事から、腫瘤形成性膵炎の診断がついた症例です。