超音波検査室 >> 実際の症例 >> 上腹部領域 >> 腎臓
 まず、はじめに
 超音波検査の基礎
 検査の進め方
 正常例の画像
 実際の症例
   上腹部領域
       肝臓
       胆嚢
       膵臓
       腎臓
       脾臓
       その他
   下腹部領域
   乳腺領域
   頚部領域
   四肢領域









 検査をしていると腎に嚢胞が認められることがよくあるが、
実際は同じ嚢胞に観察されても、腎に嚢胞を来たす疾患は多数存在し、
嚢胞の数、形状、位置、などの情報からどの疾患による嚢胞なのかを鑑別することが重要になる。


腎に嚢胞を来たす疾患をまとめると以下のようになる。


 1、先天性腎嚢胞

     a、常染色体優性多発性嚢胞腎
                (autosomal dominant polycystic kidney desease  ADPKD)

     b、常染色体劣性多発性嚢胞腎
                (autosomal recessive polycystic kidney desease  ARPKD)

     c、多嚢腎       (multicystic kidney)

     d、髄質海綿腎    (medullary sponge kidney  MSK)


 2、先天性か後天性か不明な腎嚢胞

     a、単純性腎嚢胞   (simple renal cyst)

     b、傍腎盂嚢胞     (parapelvic renal cyst)

     c、多房性腎嚢胞   (multilocular cyst of the kidney)


 3、後天性腎嚢胞

     a、後天性腎嚢胞 (萎縮化腎嚢胞) (aquired renal cystic desease)

     b、各種病変に伴う二次性嚢胞 (腎細胞癌、Wilms腫瘍に伴う嚢胞)




  1、常染色体優性多発性嚢胞腎  (ADPKD)


     両側の腎に大小無数の嚢胞が発生し腎が腫大するのが特徴的な疾患である。
   病態の進行と共に、嚢胞は腎のみならず、肝臓の嚢胞(全体の約60~70%でみられる)や膵臓の嚢胞を
   合併するようになる。
   さらに頭蓋内動脈瘤(8%)や心弁膜症の合併も認められることがある。


   多くは肉眼的血尿、腰背部痛等の自覚症状をもって発見されることが多いが
   無症状で経過をたどるものもあり、検診時の画像診断で発見されることもある。
   また、遺伝子異常に伴う疾患の為、家族に常染色体優性多発性嚢胞腎が認められれば
   同じ血族の人にも同疾患が存在する可能性が高い。


   常染色体優性多発性嚢胞腎の40~60%で60~69歳までに終末期腎不全となり、
   血液浄化療法が必要になる。
   このため、一般管理として発見時より減塩食を指導し、血圧をコントロールする必要がある。




  2、常染色体劣性多発性嚢胞腎  (ARPKD)


    常染色体劣性多発性嚢胞腎の多くは生後数ヶ月で腎不全に陥り死亡する。
   集合管の全長にわたる拡張が見られ、腎の表面全体を小さな嚢胞が覆っている。
   4万人に1人の割合で発生する。




  3、多嚢腎


    腎の異型性で腎実質、腎盂、腎杯、尿管は存在しない。
   ブドウの房状に大小多数の嚢胞が集族する。診断が確定し症状がなければ、特に問題は無く
   そのまま経過を観察する。




  4、髄質海綿腎


    髄質海綿腎は腎乳頭集合管の先端、もしくは先端近くに小嚢胞が集族して発生し
   その嚢胞内に小結石をしばしば合併する。
   一般には全ての腎乳頭が侵されるが、部分的であったり、片側性であったりすることもある。


   特有な症状はないが、結石の合併によって疝痛発作や血尿を認めることがある。
   腎石灰化症を起こす原発性副甲状腺機能亢進症、腎尿細管性アシドーシスを鑑別する必要がある。




  5、単純性腎嚢胞


    全人口の比率として60歳代で約40%、70歳代で約60%に見られるといわれている。
   大きさは数mm~数10cmに及ぶものまであり、一般に片側で単発であるが、時に多発することもある。


   通常は良性として経過をとるのが一般的だが、稀に悪性腫瘍を合併する。
   悪性腫瘍の合併が否定されれば、圧迫症状や尿路閉塞、高血圧、嚢胞内感染を合併しなければ
   治療の対象となることは少ない。


   単純性腎嚢胞の場合、特に常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)との鑑別が重要になる。
   単純性腎嚢胞と常染色体優性多発性嚢胞腎で、描出される一つの嚢胞に対する所見に違いは見られず
   その数と年齢との関係、嚢胞の数の増加傾向、家族暦、などによって鑑別を進める。




  6、傍腎盂嚢胞


    腎洞のリンパ管の拡張、もしくは閉塞から起こるリンパ管腫が本体で、40~60歳代に多く見られる。
   一般には無症状でたまたま発見されることが多い。
   時に腎盂腎杯を圧迫し水腎症を起こしたり、結石や感染を来たして発見されることもある。




  7、多房性腎嚢胞


    片側性で孤立性多房性の腎嚢胞で、腎盂との交通はなく、お互いの嚢胞間の交通もない。
   嚢胞間の隔壁には腎実質組織を含まず、周囲の腎組織は圧迫以外の異常所見を持たない事が特徴である。


   特に多房性腎嚢胞はその隔壁から腎細胞癌、Wilms腫瘍の発生を見ることがあり
   外科的摘除の適応となる。




  8、後天性腎嚢胞(萎縮化腎嚢胞)


    透析導入もしくは導入前の萎縮した腎臓に発生する腎嚢胞をいう。
   腎移植を行うと消失する事が知られている。


   両側の腎臓に大小不同の嚢胞が発生する。通常の腎臓より高頻度に腎細胞癌が発生する。






 このように、腎に嚢胞を来たす疾患は多数存在しているが、
嚢胞のように観察される疾患として腎杯憩室があげられる。


腎杯憩室(calyceal diverticulum)は、腎盂原生嚢胞(pyelogenic cyst)とも呼ばれ
腎杯が腎皮質に向かって憩室様に突出した状態をいう。


腎杯憩室内は基本的に腎杯であるので、尿が存在しているが、通常の腎杯と違い排出能が悪い為
通常の腎杯と比較して結石を形成しやすいという特徴を持っており、形質内に結石形成を認めることができれば
他の嚢胞性病変との鑑別は容易にできる。


しかし、腎杯憩室内に結石形成が認められない場合、単純性嚢胞との鑑別が困難になる。







     いろいろな単純性腎嚢胞

     傍腎盂嚢胞の超音波画像

     多房性腎嚢胞の超音波画像