超音波検査室 >> 実際の症例 >> 上腹部領域 >> 腎臓
 まず、はじめに
 超音波検査の基礎
 検査の進め方
 正常例の画像
 実際の症例
   上腹部領域
       肝臓
       胆嚢
       膵臓
       腎臓
       脾臓
       その他
   下腹部領域
   乳腺領域
   頚部領域
   四肢領域





  



 単純性腎嚢胞は観察される頻度が高く、超音波検査をしたことのある人なら一度は見たことがあると思いますが
典型例で描出されるものから、非典型的に描出されるものまであります。



 単純性腎嚢胞が、その状況によってどのように観察されてくるのか見比べてみてください。






 単純性腎嚢胞 その1 



 類円形の皮膜を持った腫瘤が腎皮質内に観察されています。
腫瘤の内部は無エコーで描出され、腫瘤の後方エコーは軽度上昇しているのがわかります。


腎嚢胞の中でも最も頻繁に観察されるタイプの腎嚢胞で、鑑別も容易です。
他方向から観察して、腎盂や腎杯と連続性が無い事を確認し、腫瘤の存在している場所が
腎皮質であれば、単純性腎嚢胞といってほぼ間違いないでしょう。


皮下脂肪や肝に沈着した脂肪が多い症例、
多重反射が問題になるようなプローブに近い位置で観察される嚢胞では、
明瞭な無エコーで描出されないことがあるので注意が必要です。





 単純性腎嚢胞 その2


 単純性腎嚢胞が腎の皮質を超え、腎盂に接するように観察されていますが
腫瘤の主座が腎皮質にあることから、房腎盂嚢胞ではなく単純性腎嚢胞であると判断するのは難しくありません。





 単純性腎嚢胞 その3


 単純性腎嚢胞では、この症例のように腎皮質の外側に突出するように観察される場合もあります。
観察する角度によっては右の画像のように、嚢胞だけが観察され腎との連続性が確認できないので
その場合は、プローブの角度を変えて腎皮質に接していることを確認しましょう。


腎嚢胞を描出した状態で呼吸をしてもらったり、プローブで圧迫を加えるなどの走査により
嚢胞が腎皮質と同期して動くことが確認できれば、単純性腎嚢胞といえるでしょう。


また、この症例のように単純性腎嚢胞が多発して観察されることがしばしばあります。
その場合、多発する腎嚢胞の中に出血性嚢胞や別の腫瘤が無いかどうか確認する事が重要にます。


(腎嚢胞の数が多い場合、常染色体優性多発性嚢胞腎との鑑別が問題になる場合や
  慢性腎不全に伴う嚢胞との鑑別が問題になる場合があります。
  それぞれの鑑別については、別途「常染色体優性多発性嚢胞腎」と「慢性腎不全」の症例で解説します)





 単純性腎嚢胞 その4


 単純性腎嚢胞が大きく成長すると、腎自体よりも大きくなる事があり決して珍しくはありません。
通常の単純性腎嚢胞と同様に、腎盂、腎杯に拡張が無ければ特に問題にはなりません。





 単純性腎嚢胞 その5


 右腎の肝臓と接する位置(モリソン窩)や左腎の脾臓と接する位置に存在する嚢胞が観察された場合、
腎臓の嚢胞なのか、肝臓の嚢胞なのか(脾臓の嚢胞なのか)鑑別する必要があります。


リアルタイムで嚢胞を確認しながら、呼吸やプローブでの圧迫、体位変換などで腎との連続性が確認できれば
容易に鑑別する事ができます。





 単純性腎嚢胞 その6


 腎皮質に接するように大きな腫瘤が認められています。
検査時にその腫瘤の動きを観察していると、腎皮質と同期して動いているのが確認できたので
腎皮質由来の腫瘤であることが予想されました。


境界は明瞭で類円形を示し、大きく育った単純性腎嚢胞の特徴に類似していますが、
内部が無エコーで描出されていません。


結果から言うと、この腫瘤は嚢胞内で出血を伴っていた腎嚢胞なのですが、
実際に超音波で観察をすると、腎細胞癌や腎血管筋脂肪腫などの腫瘤との鑑別が問題になってきます。
超音波検査で鑑別が困難な場合では、CTやMRIなどの検査で鑑別を進めることもあります。


嚢胞内の低エコー部分(血液成分を反映している)は、その血液が液体か、血栓化しているのかなどの状態を
反映して、不均一に観察される事が多いです。


腎の腫瘍との鑑別は難しい場合もありますが、ドップラーは必ず当てるようにしましょう。
出血を伴った嚢胞だとすれば、血流信号は得られないはずなので、
もし腫瘤に血流がのるようであれば、それは単純性腎嚢胞ではありません。


またこの症例のように大きく成長した出血を伴った嚢胞の場合、
体位変換などに伴って嚢胞内で血液成分が流動するのがリアルタイムで観察される事があります。
もし、流動する様子が観察されれば、腎腫瘍は否定できます。