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 11歳 女性


 発熱、全身倦怠感を主訴に来院された患者様です。
発症当初は「風邪でもひいたのだろう」と考え、1週間ほど様子をみていたが、熱が下がらないので来院されました。
血液検査で、肝機能の軽度の異常が認められ、スクリーニング目的で腹部超音波検査が行われました。







肝左葉の季肋部縦走査です。

肝左葉の腫大が疑われる所見が得られています。












肝左葉の季肋部横走査では

肝S1も腫大しているように観察されました。










体調が悪く、1昨日前の晩から何も口にしていない

ということでしたが、

胆嚢壁は肥厚しているのが観察されています。








脾臓もやや腫大しているように観察されていますが

年齢が11歳と若く、正常の脾臓の大きさか

それとも、脾腫を伴っているのかの鑑別は困難でした。










肝門部を観察すると、著明な腹部リンパ節の腫大が

認められています。

約17mm程度に腫大したリンパ節が

3つ認められました。







門脈に並走するように管腔構造が認められました。

肝内胆管の軽度拡張を疑ってドップラーをあててみると

下の画像が得られました。














 管腔構造は肝内胆管ではなく

肝動脈でした。












通常、肝動脈はそれほど目立って観察されないのですが、明瞭に走行が観察されるので
軽度の肝動脈の拡張が認められるのではないか? と疑いました。


肝動脈の拡張は急性肝炎などの肝腫大をきたす疾患でも観察される事がありますが、
これは、肝腫大に伴う門脈域の肥厚に伴う代償性の肝動脈拡張を疑う事ができます。


つまり、肝動脈の拡張が認められたことも、肝腫大の存在を疑わせる所見と考える事ができます。


  ・ 年齢が若いこと

  ・ 胆嚢壁の肥厚、肝動脈の代償性の拡張、等の所見からも肝腫大が疑われたこと

  ・ 脾腫を否定できないこと

  ・ 肝門部リンパ節の著明な腫大が認められたこと


 などの理由から、伝染性単核球症が疑われることから、最後に頚部のリンパ節を観察してみました。




 すると、左右頚部ともに複数のリンパ節の著明な腫大が認められました。
リンパ節の形状は扁平でリンパ節門も観察されていますので、反応性のリンパ節の腫大と考えることができました。


超音波上、伝染性単核球症を疑わせる条件が揃ったともいえます。
しかし、この時点で血液データを確認できなかったので、白血病などの可能性も考えられました。


そこで、超音波検査のレポートには

  ・ 胆嚢壁の肥厚、肝動脈の代償性の拡張、等の所見からも肝腫大が疑われたこと

  ・ 脾腫を否定できないこと

  ・ 肝門部リンパ節の著明な腫大が認められたこと

  ・ 頚部リンパ節の著明な腫大が認められたこと

 などの直接所見を書き、超音波所見として急性肝炎(伝染性単核球症?)が疑われることを追記しました。



 この後、複数の検査を行った後、伝染性単核球症が確定診断となり入院、

 約1ヶ月後に肝機能も正常値になり、退院となっています。