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 43歳 女性

 会社検診で顕微鏡的血尿を指摘され、精密検査目的で当院を受信された患者様です。
検査時にいくつか質問をしたところ、自分で血尿には気が付かなかったということでした。


血尿の原因になる疾患は非常に多く存在しますが、まず腎疾患がないかどうか確認しました。



 腎のサイズ、腎皮質の状態、エコーレベル、腎盂、腎杯の状態、水腎症の有無など
腎臓には明らかな異常所見は認められませんでした。
尿管は拡張していないので観察できないので、次いで膀胱を観察しましたが膀胱にも異常は認められませんでした。



腎臓、膀胱、ついでに子宮卵巣も観察しましたが、超音波上では異常は認められず、
最後に腎静脈の状態を観察しました。







 クリックすれば解剖の解説が表示されます。


   ⇒  










左腎静脈に明らかな拡張は認められないものの、腹部大動脈と上腸間膜動脈の間の左腎静脈は
押しつぶされているように観察されました。



Bモードでこのような画像を描出したまま、カラードップラーをのせると下のような画像が得られました。





大動脈と上腸間膜動脈は非常に血流が早い為にモザイク状のカラーで表示されています。


脾静脈のカラーを見てみると
脾臓側から赤一色でプローブに向かう方向へ血流が流れ、
上腸間膜動脈を超えたあたりから青一色でプローブから離れる血流であることがよくわかります。


この脾静脈の血流と比較してみると分かりやすいと思いますが、
左腎静脈の血流は、まず左腎側から赤一色でプローブ方向へ向かった後、大動脈と上腸間膜動脈との間で
細くなり、その後青が主体のカラーで表示されていますが、赤も混ざったジェット流として表示されています。



このカラードップラーの画像から、大動脈と上腸間膜に挟まれた位置を境に
左腎静脈の血流速度が速くなっていることが予想できます。



そこで、この部位にパルスドップラーをあててみました。





 パルスドップラーによる血流波形は、腎静脈のものであるのにまるで動脈のような拍動波形を示しています。
これは、腹部大動脈と上腸間膜動脈に挟まれている為、その拍動の影響を受けた血流であると考えられます。


小さくて見づらいと思いますが、

左腎静脈の最高血流速度 Vmax = 107 cm/s

左腎静脈の最低血流速度 Vmin = 34.1cm/s          が得られました。



 簡易ベルヌーイの式は  圧較差 P (mmHG) = 4Vmax² (m/s) で表されます。


今回得られた Vmax = 107 cm/s の単位をあわせると、Vmax = 1.07 m/s となりますので、

 圧較差 P (mmHG) = 4×(1.07)² = 4×1.1449 = 4.5796 mmHG となります。




 圧較差 P = 4.6 mmHG と、比較的高い圧較差であったこと、

 左腎静脈が大動脈と上腸間膜動脈に挟まれる位置からジェット流で観察されたこと

などの所見から、ナットクラッカー現象が疑われました。