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 57歳 女性

 食欲不振、腹部不快感、食後の腹痛を主訴として、外来を受診された患者様です。
 依頼内容を読んで患者様の話を聞き、プローブをあてるまでは、勝手に「胆石だな・・」と思っていました。



 そして、実際にプローブをあてると次のような画像が得られました。






 あてた瞬間、「なんじゃこりゃ〜!!」と言いたくなるほど、目立つ複数の腫瘤が認められます。



 範囲は肝臓直下から鼠径部までの動静脈周囲全域にわたっていました。



 腫瘤は実質臓器よりも明らかにエコーレベルの低い腫瘤として描出され、深部の血管とはエコーレベルの違い
 がわからないほど低く、境界は明瞭な類円形や分葉状の形状です。



 腫瘤を描出しながらプローブで圧迫を加えてみると、腫瘤の変形が確認でき、比較的軟らかい印象を持ちました。



 下大静脈は途中、腫瘤形成のために体表側に押し上げられるように椎骨から離されているのが確認できました。
 下大動脈も連続性を確認しながら追いかけてみましたが、椎骨との間に腫瘤形成は認められませんでした。





 上の写真は脾臓です。
 脾臓中央に境界明瞭で内部エコーの不均一な腫瘤が認められます。
 悪性リンパ腫の脾内病変と判断しました。 ちなみに、脾門部に低エコーに観察されるのもリンパ腫です。



 一目でわかる程の派手な「悪性リンパ腫」だな、、、と思っていましたが
 類円形の形状、低いエコーレベル、腫瘤の軟らかさ、脾内腫瘤病変の存在などの証拠を得て、
 ますます「悪性リンパ腫」で間違いないな。。。と思い、検査を終了しました。



 今回の症例は典型的な悪性リンパ腫だな、 と思っていましたが一つ分からない事がありました。



 悪性リンパ腫の場合、腫瘤形成により下大動脈が持ち上げられたように観察される事を
 floating aorta sign と呼んで、特徴的な所見とされていますが、
 今回の症例のように、大動脈には異常が認められず下大静脈が持ち上げられていたら
 それは floating aorta sign と呼ぶのでしょうか?



 いろんな本を調べてみましたが、下大静脈について記載している本がなく先輩に聞いてみました。



 答えは「No」、つまり下大静脈では floating aorta sign とは言わないそうです。
 下大静脈は大動脈に比べ、軟らかいので椎骨と下大静脈の間に腫瘤ができてしまうと
 悪性リンパ腫でなくても、floating aorta sign のように持ち上げられて観察される事があるらしいです。



 floating aorta sign は動脈限定だそうです。



 その日、超音波検査後に撮られたCTの画像です。
 CTでも超音波同様、悪性リンパ腫が疑われていました。