超音波検査室 >> 実際の症例 >> 下腹部領域 >> 腸管
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   超音波検査で特徴的な所見を示すことが多いが、
        カタル性、化膿性、壊疽性、穿孔性と虫垂炎の状態によって超音波所見は異なる。


   虫垂径が炎症の程度に比例した腫大(6mm以上)を示すが、
                  穿孔性虫垂炎では虫垂径は縮小する傾向にある。


   虫垂壁は肥厚し低いエコーレベルで観察される。
    上行結腸、盲腸、回腸末端に炎症が波及し、虫垂以外の腸管壁の肥厚を認める場合がある。


   虫垂内腔に結石(糞石)を伴う場合がある。


   虫垂周囲の脂肪組織等に炎症が波及すると、超音波上では淡い高エコー領域として観察される。
      また炎症の程度が進むと、虫垂周囲、盲腸下部、ダグラス窩等に
                              腹水や膿瘍を認める場合もある。


   腸間膜リンパ節の腫大を伴う例が多い。






  虫垂の閉塞により虫垂内腔の圧が上昇し、
 腸内細菌の増殖および血行障害による虫垂粘膜防御機構の破綻のため、腸内細菌などが虫垂壁内に進入し
 感染を起こすことが急性虫垂炎の病因とされている。



 虫垂の閉塞の原因として、
 小児や若年者ではリンパ組織の過形成が多く、成人では結石(糞石)や異物、腫瘍などが多い。



  急性虫垂炎は全ての年齢層に起こるが、本邦の統計上10歳代に最も多くみられる。
  10歳未満でも急性虫垂炎は起こるが、成人の場合と比べて穿孔や膿瘍形成する割合が高く
  特に5歳未満では穿孔率が高いことが知られている。
  男女差はあまり認められない。



  典型的な急性虫垂炎の症状は、心窩部痛から始まり、心窩部痛が徐々に右下腹部に移行してくる。
  しかし、症状の個人差が大きいことも急性虫垂炎の特徴であり、あまり痛みを訴えない例も少なくない。
  その他の症状としては、食欲不振、嘔気、嘔吐、が一般的にみられる。



  急性虫垂炎は、その進行状態により一般的に4段階に分類される。

  (1)カタル性虫垂炎
     虫垂は軽度(超音波上、6~8mmで観察されることが多い)腫大し、
     粘膜に軽度の浮腫、びらん、充血などを認める状態。


     腸間膜リンパ節の腫大を認めることが多いが、腹水、周囲組織の炎症は伴わない場合も多く
     正常虫垂との鑑別が困難な場合がある。


    




  (2)化膿性虫垂炎(蜂窩織炎性虫垂炎)
     虫垂は中等度から高度(超音波上、8~10mmで観察されることが多い)腫大し、
     虫垂壁に明らかな白血球浸潤を伴う蜂窩織炎性炎症を伴う。内腔には膿が貯留することが多い。


     超音波検査上、虫垂が描出できれば急性虫垂炎は比較的容易に診断可能である。
     虫垂周囲の組織は炎症の波及によりエコーレベルの淡い上昇を認め、腸間膜リンパ節は腫大し
     盲腸周囲、虫垂周囲、ダグラス窩等に腹水の貯留を伴う場合が多い。


    




  (3)壊疽性虫垂炎
     虫垂は暗赤色に腫大(超音波上、10~12mmで観察されることが多い)し、虫垂壁に壊死を認める。
     壊死が虫垂壁の全層に及ぶと、虫垂壁は菲薄化し粘膜面は不整になり穿孔を起こしやすくなる。
     内腔には膿が貯留している。


     虫垂は高度に腫大しているために急性虫垂炎の診断は容易である。
     虫垂粘膜面は不整に観察され、虫垂の層構造も厚く明瞭に観察される。
     周囲組織への炎症も著明に見られ、虫垂を描出すること自体が容易になるが
     虫垂周囲の炎症とは別に、穿孔している領域が無い事を確認することが重要になる。


    




  (4)穿孔性虫垂炎
     虫垂壁が菲薄化し穿孔を起こすと、虫垂周囲の腹腔内に貯留していた膿が漏れ
     腹膜炎や腹腔内膿瘍を形成する。
     虫垂は圧が上昇していた状態から、内腔の膿を腹腔内に排出するため、
     虫垂腫大の程度は壊疽性虫垂炎よりも軽い。


     腸間膜リンパ節の腫大、腹水の貯留、腹腔内組織への炎症の波及は明瞭に見られる。
     虫垂は明瞭に見られる場合もあるが、穿孔して虫垂内容物が腹腔内に漏れ出すと
     虫垂径は縮小し、周囲に膿瘍形成が起こるため、腹腔内は非常に不均一に描出されるようになり
     虫垂自体を同定することが難しい場合がある。


    



  多くの場合に 10,000~20,000/μℓの白血球増多を認め、血清CRPの上昇を伴う。
  発熱は微熱(37度台)であることが多く、38~40℃程度の発熱がある急性虫垂炎では
  腹膜炎や膿瘍形成を伴っている可能性が高くなる。
  カタル性急性虫垂炎よりも進行した状態では、腹膜刺激症状を認める場合が多い。


  急性虫垂炎には特徴的な症候があり、超音波検査をしながらでも確認できる。
  特に有名なものをここで紹介する。

    筋性防御
      腹部を、ゆっくり、そっと圧迫していくと、無意識に腹筋が緊張する症候をいう。
      患者の意識が腹部に集中している場合に行うと、偽陽性を示す場合がある。


    Blumberg症候
      腹部をそっと圧迫した後に、急に圧迫を緩めると疼痛が出現する症候をいう。




 急性カタル性虫垂炎


   正常虫垂と鑑別が困難なカタル性虫垂炎

   先端部のみ軽度の肥厚を認めたカタル性虫垂炎

   腸間膜リンパ節の腫大を伴ったカタル性虫垂炎


 急性蜂窩織炎性虫垂炎


   カタル性虫垂炎と鑑別が困難な蜂窩織炎性虫垂炎

   比較的鑑別が容易な蜂窩織炎性虫垂炎

   虫垂径の拡張が軽度だった蜂窩織炎性虫垂炎

   先端部に限局して病変があった蜂窩織炎性虫垂炎


 急性壊疽性虫垂炎


   各層構造が明瞭に観察された壊疽性虫垂炎

   先端部に限局して観察された壊疽性虫垂炎

   左側臥位にて描出できた壊疽性虫垂炎

   婦人科疾患が疑われた壊疽性虫垂炎


  穿孔性虫垂炎


   虫垂周囲に不均一な領域が観察された穿孔性虫垂炎

   穿孔の所見が描出できなかった穿孔性虫垂炎

   腹腔内膿瘍形成を認めた穿孔性虫垂炎

   虫垂の腫大が軽度だった穿孔性虫垂炎