超音波検査室 >> 実際の症例 >> 下腹部領域 >> 腸管
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 12歳 男性


 小学校に通う男の子です。
 日曜日の夕方から腹痛を訴え、自宅で経過観察をしていたが
 月曜日の朝に腹痛が治らず、やや痛みも強くなっているようなので当院の消化器内科を受診された患者様です。


 痛みは腹部正中から右下腹部にわたり、白血球数の増加、CRPの軽度上昇を伴い、急性虫垂炎が疑われ
 腹部超音波検査が施行されました。





 左上の画像は回腸末端部~回盲部~盲腸部を描出した画像です。
 回腸末端はびまん性に肥厚しており、蠕動運動も乏しく観察されました。
 
 右上の画像は腸間膜リンパ節を描出した画像です。
 腸間膜リンパ節は複数の腫大を認め、最大径で約16mm、リンパ節を描出するのは容易で
 回盲部周辺にプローブをあてると、広い範囲にリンパ節が観察できる状況でした。


 ここまでの写真だけで原因は特定できないものの、炎症が存在していることがわかります。






 先に紹介した回盲部、回盲弁が描出される部分から盲腸を確認しながら、盲腸の下部を描出していくと
 比較的容易に虫垂を描出できました。
 上の画像では径の計測はしていませんが、虫垂基部の径は約4mm、中央部付近でも5mm以下で観察され
 急性虫垂炎を疑う所見ではありません。


 この時点で、急性虫垂炎は否定的?という考えも出てきましたが、
 虫垂の先端部が明瞭に描出されていないので、もう少し観察を続けて先端を探しました。




 すると、上のような画像が得られました。
 虫垂基部から虫垂の中央部までは径は4mm程度で観察されていますが、先端部に限局して
 虫垂の腫大(約7.6mm)が認められます。


 虫垂の層構造は明瞭に観察されています。
 層構造自体に肥厚は認められませんが、虫垂内腔が広がっていて内部に均一な低エコーで描出される
 液体貯留を認めています。


 明らかな結石は描出されませんでしたが、先端部だけ腫大しているのは正常な虫垂の形態としては異常と考え
 急性虫垂炎を疑う所見と考えました。


 レポートには、先端部に限局した急性虫垂炎疑いで腸間膜リンパ節の複数の腫大を伴っていると
 報告しました。
 回腸末端の腸管や腸間膜リンパ節に炎症を伴っていることから、カタル性というよりも
 蜂窩織炎性の虫垂炎まで進行している、と思っていました。
 

 その後この患者様に対して、すぐに虫垂切除術が行われました。
 病理の結果はカタル性虫垂炎となっていました。


 この先は臨床側の予想でしかありませんが、
 この患者様は、虫垂炎の術後にもしばらく腹痛を訴え続けており通常よりも入院日数が長くなっていたため
 急性虫垂炎の他にも腸炎などの炎症を起こす疾患が存在していたことが疑われていました。


 2週間ほど経過を見ていると、腹痛も軽快し検査データも異常を示さなくなっていたので退院となったそうです。


 そう考えると腹部超音波検査で描出された、回腸のびまん性の壁肥厚と腸間膜リンパ節の腫大は
 急性虫垂炎によるものではない可能性もあります。