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 10歳 女性


 小学校に通う女の子です。
 朝起きて心窩部痛と吐気を感じていたが、そのまま学校に行き、家に帰ったら腹痛が増強していた。
 夕方6時ごろ、腹痛が軽快しないために、夜間外来を受診された患者様です。




 急性虫垂炎疑いにて回盲部を観察していると、まず観察されたのは腸間膜リンパ節の腫大でした。
 複数の腸間膜リンパ節の腫大が、回盲部が主体でしたが腹部全体に観察されていました。
 腸間膜リンパ節の大きさは最大でも10mm程度でした。


 虫垂は盲腸から総腸骨動脈に向かって観察されましたが、計測できた最大径は約5mmで正常範囲内、
 層構造も正常に観察され、正常の他の腸管との区別が難しく、虫垂の描出自体に苦労していました。


 虫垂の形態や、虫垂径などから、急性虫垂炎は否定的では? と思いながらも、
 虫垂の先端部を明瞭に観察しようとしていました。




 すると、先ほど観察されていた虫垂は、さらに骨盤腔に向かって連続していることがわかり
 虫垂を追いかけて観察していくと、このような画像が得られました。


 虫垂の先端部と思われる部分は体表に向かって観察され、先端部付近の内腔は拡張し、液体貯留を認めます。
 明らかな結石は描出されませんでしたが、虫垂径は8.4mmと腫大し、
 粘膜、粘膜下層が一部菲薄化しているように観察されます。


 虫垂先端部周囲に存在している脂肪組織は、他の領域にある脂肪組織と比較して
 エコーレベルの淡い上昇を認め、虫垂周囲が不均一に白くなり、虫垂だけが黒く目立って観察されています。
 周囲の脂肪組織への明らかな炎症細胞の浸潤と考えました。


 以上の所見から、急性虫垂炎(蜂窩織炎性~)疑い、とし、術後の病理の結果も蜂窩織炎性虫垂炎でした。



 この虫垂先端が観察できれば、蜂窩織炎性の急性虫垂炎を疑う事は難しくないでしょう。
 しかし実際に検査している時は、虫垂の一部が骨盤腔の深いところに落ち込むように観察され
 検査中には「先端部は骨盤腔の深いところに位置し、観察困難?」 とも考えました。


 しかし、実際の虫垂は骨盤腔の深い位置は走行しておらず、急転回して方向を変えているだけでした。
 それで、虫垂の先端を描出するのが難しかったわけですが、
 今考えてみれば、虫垂を長軸で観察していましたが、あまり短軸にして観察していませんでした。


 虫垂を長軸で描出して観察すると、全体の状況が確認しやすく、走行や炎症所見の存在など
 多くの情報を持った画像が得られますが、先端部を間違えやすいという欠点もあります。
 一つ間違えれば、急転回している部分を虫垂先端と判断し、急性虫垂炎を否定してしまいかねません。
 虫垂の先端部を同定するときは、必ず虫垂の短軸断面にし、虫垂が盲端で終わっている事を確認しましょう。