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 3歳 男性


  腹部の膨隆に母親が気付き、外来を受診された患者様です。
  お腹を出してもらいましたが、見た目には膨隆があるのかどうか判りませんでした。



  しかし、実際に触らせてもらうと、確かに「しこり」のようなものが触れました。
  早速、その部位にプローブをあて、得られたのが下の画像です。




  大きさは約30×50×13mmの腫瘤で、皮膚直下、腹直筋上に位置する腫瘤が認められます。
  低エコーで観察される類円形の部分と、無エコーで観察される多房性の部分が描出されまています。
  低エコーで描出される類円形の部分は後方エコーの増強が認められます。



  続いてドップラーをあてながら得られた画像が下の画像です。




  ドップラー下で観察したところ、軽く圧迫を加えたときだけに観察されるドップラー信号が
  無エコー部分に認められました。



  一時は、表在に存在する可能性のあるいろいろな腫瘤を考えましたが、このドップラー信号が
  得られたおかげで、リンパ管腫を一番に疑い、無エコー部と低エコー部は一体の腫瘤と考えました。



  問題は、この低エコー部が出血であるか、それとも感染によるものなのか、という点です。



  低エコー部にドップラー信号が認められれば出血と断定できるのですが、ドップラー信号は確認できません。
  しかし、これだけ大きい炎症であれば、一つの腔だけにとどまっているのはおかしい、と考えました。
  また、腫瘤周囲に炎症の波及を示唆するような、淡い低エコーが見られないことからも
  この低エコー部は出血ではないのか? とは考えていました。



  どうすれば、炎症か出血かが、わかるのだろう? と考えながらじっくりと低エコー部を観察していました。



  すると、非常にゆっくりと、内部の低エコー部分が流動しているように観察されました。
  私はすぐに左側臥位に体位変換をして、圧迫したり圧迫を緩めたりしながら観察を続けると
  やはり、内部は流動しているように観察されました。



  炎症が流動するわけも無く、この低エコーは出血に伴うもので、他のリンパ腔とは連続性を持たない
  と報告しました。



  恐らく、先天的にリンパ管腫が存在していたのでしょうが、出血が無い状態では内圧が低く
  触っても腫瘤として触れなかったのではないでしょうか。



  3歳になった時に、たまたま出血が起こり、内圧が上がることによって腫瘤として触知できたのではないか?
  と思います。