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 58歳 女性



 患者様を検査室に誘導し、服を脱いでもらい乳房を観察すると、明らかな左右差が一目でわかりました。
 病変がある左側の乳房は皮膚の発赤が認められ、通常の乳房のような弾性は認められませんでした。



 患者様の話によると、発赤が始まったのは5日程前で、現在では下着を付けているだけで痛いらしく
 左側の乳房を触らせてもらうと、すぐにわかる程の熱をもっていました。
 外傷などの記憶は無いそうです。



 触るだけでも痛いということなので、できるだけ左側乳房を圧迫しないように注意しながら
 プローブをあてて、得られた画像が下の画像です。


                



 左側の画像は左右を比較する為に、同じAC領域を写しています。
 一目で違いが判ると思いますが、表皮、真皮、は著明な肥厚を示すとともに、そのエコーレベルが上昇しています。
 皮下脂肪組織のエコーレベルも右と比較すると上昇しており、皮膚と皮下脂肪組織、乳腺組織との境界は
 非常に不明瞭です。



 乳腺部分では広い範囲で音響陰影を伴い、 乳腺組織や乳腺後脂肪組織、大胸筋や肋骨は
 ほとんど観察されない状態です。



 左の画像では、皮膚の厚さを計測していますが、8.6mmもありました。



 この時点で、乳腺の炎症はまず間違いないと思いましたが、
 問題は、単なる乳腺炎なのか炎症性乳癌なのか、ということです。



 音響陰影の状態が激しく、もし腫瘤性病変が存在しても描出はできないかもしれないと考えていたところ
 左CD領域で下のような画像が得られました。



 



 明らかな腫瘤性病変を発見!



 この時点で、私の中では炎症性乳癌で確定したも同然でした。
 後は、その腫瘤が何の組織の乳癌であるかだけです。



 一見して、腫瘤はエコーレベルが非常に低く、形状は不整で、D/W ratio (縦横比)が高く、音響陰影を伴います。
 腫瘤周囲にはわずかですが、浸潤を示唆するような腫瘤周囲の高エコー帯が確認できます。



 炎症性乳癌のほとんどは「硬癌」から引き起こされる事と、腫瘤の超音波画像とで
 「硬癌」由来の炎症性乳癌と考えられた症例です。



 超音波検査の直後に行われたCTの画像です。






 CTでも同様に左右差が明らかに描出されています。



 また、乳頭が写っているレベル、すなわちCD領域に
 腫瘤性病変も描出されています。










 術後の病理診断では、腫瘤性病変は「充実腺管癌」と「硬癌」の組織が見られ、
 領域の広かった「硬癌」が最終診断となっていました。
 いわゆる、「充実腺管癌」くずれの「硬癌」だったようです。