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 29歳 女性





  左乳房に「しこり」を自己発見されて外来受診された患者様です。



 腫瘤は比較的大きくて容易に触れるという事なので、検査前に触らせてもらいました。



 正直、29歳という年齢という事を考えなくても、腫瘤の印象は類円形で軟らかいような感じがして
 触った時の第1印象としては、線維腺腫?っていう感じでした。



 実際にプローブをあててみると、類円形に近い分葉状の腫瘍が認められました。
 触診の第1印象で線維腺腫が頭の中に入ってしまった私は、「随分エコーレベルの低い線維腺腫だな~」
 と思っていました。



 しかし、検査を進めるにつれ得られる情報は、どんどん線維腺腫から遠ざかっていきます。



 腫瘤は分葉状で35×32×17.5mm程で、D/W ratio は0.5、
 エコーレベルは非常に低く、内部エコーはやや不均一で一部に嚢胞様変性が認められます。
 後方エコーは明瞭に増強しています。
 腫瘤はよく見ると境界が不整で不明瞭な部分が認められ、微細石灰化が少し認められます。
 また、嚢胞様変性部と思われる部位を避けるように多くの血流信号も認められました。



 腫瘤周囲には部分的に淡く観察される部分が認められ、腫瘤に接する脂肪組織部分の高エコー化が
 認められ、浸潤癌を疑いました。
 乳腺の境界線の断裂は認められず、大胸筋との分離も容易に認められました。



 腫瘤の情報を一通り得た段階で、考えを整理する頃には線維腺腫はすっかり頭の中から消えていて
 浸潤癌という結論がでていました。



 乳房の走査が終わり、リンパ節をチェックしていると次のような画像が得られました。





 小さくて、たったの一つしか見つかりませんでしたが、リンパ節転移を疑わせる腫大です。



 ここで、腫瘤は「充実腺管癌」かな?と考えていた私は疑問点がありました。



 腫瘤周囲に部分的とはいえ、浸潤を示唆する淡い高エコー部が認められた事、
 通常、充実腺管癌は圧排性により膨張するように発育を続けるので、
 乳腺と腫瘤の境界線は非常に明瞭に観察されるはずです。



 なので、私は「基本は充実腺管癌で一部硬癌への変性を伴っているのかな?」と考えました。



 しかし、術後の病理診断には「髄様癌」とありました。



 珍しいなと思った私は、もう一度撮った写真を見直してみました。
 非常に低エコーな内部エコー、境界は明瞭、後方エコーの増強、どれをとっても「髄様癌」であてはまります。
 それこそ「髄様癌」の典型例ではないでしょうか?