超音波検査室 >> 実際の症例 >> 頚部領域 >> 甲状腺
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 64歳 女性



  


 甲状腺の大きさ

   甲状腺峡部 1,5mm
   甲状腺右葉  幅 16mm  厚さ 18mm  長さ 44mm
   甲状腺左葉  幅 15mm  厚さ 21mm  長さ 43mm



 甲状腺右葉に2つの結節性病変が観察されています。
 左の画像では境界明瞭で内部が均一な無エコーとして描出されており
 甲状腺の単純性嚢胞との鑑別が必要と考えられます。

 右の画像では甲状腺右葉内にもう一つの嚢胞性病変が観察され、内部には充実性の部分と石灰化と思われる
 高エコーで描出されている部分が2箇所確認できます。
 嚢胞性病変の内部にこれらの構造物が観察されることや、複数(2つ)の嚢胞性病変が確認できることから
 これらの結節は腺腫様結節であることが疑えます。

 甲状腺の単純性嚢胞は比較的珍しいので、単発の嚢胞として描出される場合は鑑別として考えますが
 この症例のように、甲状腺実質内に複数の結節を認めた場合は
 ほとんどが腺腫様甲状腺腫と考えてよいと思います。






 58歳 女性

  


 甲状腺の大きさ

   甲状腺峡部 2mm
   甲状腺右葉  幅 17mm  厚さ 18mm  長さ 49mm
   甲状腺左葉  幅 15mm  厚さ 17mm  長さ 47mm



 甲状腺の左右の両葉に複数の結節を認めています。
 比較的、同じ程度の大きさの嚢胞性病変が複数存在していることから、腺腫様甲状腺腫を疑うのは難しくありませんが、
 こういった場合注意しなければいけないのは、これらの腺腫様結節と思われる複数の結節に紛れ込んで
 濾胞腺腫や嚢胞内型乳頭癌が存在していることがある、ということです。


 左画像では甲状腺左葉の嚢胞性病変が描出されていますが、いずれも明瞭な嚢胞様結節として描出されており
 腺腫様甲状腺腫以外は鑑別にあがりません。
 また、右画像では、嚢胞性病変の内部に1つだけ観察される石灰化や、不整な充実性領域を認めているものがあり
 腺腫様結節の特徴的所見と考えられます。
 この左右の画像に写っている結節は、いずれも腺腫様甲状腺腫の特徴的な所見といえるでしょう。







  45歳 女性

 


 甲状腺の大きさ

   甲状腺峡部 2mm
   甲状腺右葉  幅 21mm  厚さ 22mm  長さ 48mm
   甲状腺左葉  幅 16mm  厚さ 19mm  長さ 47mm



 甲状腺右葉は軽度の腫大を認め、また右葉の上部に一つだけ嚢胞性病変が観察されています。
 境界は明瞭で、内部には複数の点状高エコーが観察されています。
 しかし、嚢胞性病変の内部に充実性部分がないことから、悪性を疑う所見ではないと判断できます。
 観察された結節は、この1つだけですが腺腫様結節と判断するのは、さほど難しくありません。






 53歳 女性

   

  


 甲状腺の大きさ

   甲状腺峡部 2、5mm
   甲状腺右葉  幅 23mm  厚さ 22mm  長さ 49mm
   甲状腺左葉  幅 15mm  厚さ 19mm  長さ 43mm


 甲状腺右葉は軽度の腫大を認め、甲状腺右葉に一つ、左葉に一つ、計2つの結節を認めています。
 甲状腺右葉に観察されている結節は、内部に隔壁のような構造が確認でき
 結節内の比較的広い範囲で充実性領域を認め、嚢胞性の領域よりも充実性の領域の方が大きいと考えられます。


 この結節内の充実性領域は腺腫様結節内の過形成領域を観察していると考えられますが、
 このような領域に乳頭癌が存在している可能性があるため、注意深く観察する必要があります。
 この症例の場合、充実性部分は広く観察されていますが集族する複数の微細石灰化等の乳頭癌を疑う所見は
 認めず、内部の血流信号も乏しく観察されるため、悪性を疑う所見は無いと判断できます。
 甲状腺左葉に観察されている嚢胞性病変内部にも過形成と思われる充実性領域が観察されており
 この所見も腺腫様甲状腺腫と鑑別する手がかりになっています。






 49歳 女性

  


 甲状腺の大きさ

   甲状腺峡部 1、5mm
   甲状腺右葉  幅 25mm  厚さ 21mm  長さ 46mm
   甲状腺左葉  幅 17mm  厚さ 19mm  長さ 45mm



 甲状腺右葉はやや腫大し、甲状腺右葉、左葉ともに内部に結節性病変を認めています。
 右画像に観察されている甲状腺左葉内の石灰化を伴った嚢胞性病変は
 腺腫様向上腺腫として間違いなさそうです。
 では左画像に観察されている甲状腺右葉に存在する結節についてはどうでしょう?


 甲状腺右葉内には、複数の嚢胞性病変が集まって存在しているように見え
 嚢胞性病変内部には明らかな充実性領域や石化化は存在せず、腺腫様甲状腺腫として間違いない所見、
 という解釈は間違いです。


   

 この画像は同じ症例の甲状腺右葉を観察したものですが、甲状腺右葉内に観察されている嚢胞性病変の
 外周を取り囲むように薄い被膜と思われる構造物が描出されています。
 静止画だけでなく、実際に動画として観察できればこの被膜に気が付く方も多いと思いますが
 「複数の嚢胞性病変」と思い込んでしまうと、この被膜に気が付かない可能性が出てきます。


 つまり、甲状腺右葉に観察されている結節は1つだけで、被膜があり、甲状腺実質とほぼ等エコーで描出される
 充実性領域が存在しており、その内部に複数の嚢胞性領域が観察されていることになります。
 腺腫様結節の場合、このように被膜が目立たず、甲状腺実質と同等のエコーレベルで描出される結節も
 多く存在するので注意が必要です。






  62歳 男性

   


 甲状腺の大きさ

   甲状腺峡部 1、5mm
   甲状腺右葉  幅 20mm  厚さ 18mm  長さ 49mm
   甲状腺左葉  幅 18mm  厚さ 17mm  長さ 48mm



  甲状腺右葉に結節が観察されています。
  内部に嚢胞性領域は認めず、不均一な低エコー領域として描出されています。
  境界は明瞭ですが、明らかな被膜は観察されず、明らかな微細石灰化も観察されませんでした。


  腺腫様甲状腺腫を疑う所見として良いと考えますが、内部に不均一な充実性領域が存在するということで
  どうしても悪性病変の否定ができません。
  超音波検査では腺腫様甲状腺腫疑い、となりましたが、やはり悪性の否定ができないと判断した
  臨床側はこの腫瘤に対して生検を行っています。
  病理の結果では、明らかな悪性細胞は認めず、過形成性病変のみが認められたそうです。
  つまり、腺腫様甲状腺腫でした。


  この症例のように、はっきりとした特徴的な所見が得られず、画像だけでは良悪性の鑑別が困難な症例が
  少なからず存在します。
  そういった場合は、無理に良悪性の鑑別を進めるのではなく、画像だけで判断できない症例であると判断すること
  が重要ではないでしょうか?