超音波検査室 >> 実際の症例 >> 頚部領域 >> 甲状腺
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 27歳 女性


  以前より軽度の腹部痛を訴え、当院の消化器内科の外来を受診されていた患者様です。
 数ヶ月の経過中に頻脈と多汗を認め、血液検査を行い甲状腺機能亢進を指摘されました。
 精密検査目的にて甲状腺の超音波検査が施行されました。







 甲状腺の大きさ

   甲状腺峡部  4mm
   甲状腺右葉  幅 21mm  厚さ 15mm  長さ 60mm
   甲状腺左葉  幅 21mm  厚さ 12mm  長さ 56mm


  甲状腺の腫大の程度は、軽度腫大、もしくは正常範囲内でもよいと考えましたが
 甲状腺辺縁はやや凸に変性しており軽度の腫大があるものと判断しました。
 甲状腺実質は明らかに不均一に観察されています。


 ドップラーをあててみると、甲状腺実質全体に著明なドップラー信号が観察されます。
 上甲状腺動脈の血流速度を計測してみると、約140cm/secと明らかな流速の上昇を伴っています。。


 甲状腺の腫大は明らかではありませんでしたが、甲状腺実質が不均一に観察されることと
 甲状腺実質の血流が豊富に観察されること、上甲状腺動脈の血流が著明に上昇していることから
 バセドウ病に伴う超音波所見として矛盾しないと判断しました。



 同時に行われた血液検査の結果を見てみると
 甲状腺刺激ホルモン(TSH)は 0,002μU/ml以下と低下、
 遊離トリヨードサイロニン(Free T3)は 9.9pg/mlと上昇、
 遊離サイロキシン(Free T4)は 3.0ng/dlと上昇、
 TSHレセプター抗体は 陽性、
 いずれの数値もバセドウ病の特徴的な数値を示し、バセドウ病と確定診断がついた症例です。



 この症例は、血液検査の結果として典型的なバセドウ病の所見を示しています。
 しかし、超音波所見だけで考えると、甲状腺の腫大があまりはっきりしません。
 甲状腺実質の不均一さや甲状腺実質の血流増加が認められたため、
 バセドウ病と判断するのはそれ程難しくないと思います。


 超音波検査上、バセドウ病の典型的な所見を示す症例はそれ程多くなく
 いくつかの所見がバセドウ病に一致するようであれば、バセドウ病を疑えると思います。
 ただし、甲状腺機能低下症でもバセドウ病と間違えそうな超音波所見を示す事もあるので
 可能ならば血液検査による甲状腺機能をチェックするべきだと考えます。