超音波検査室 >> 実際の症例 >> 頚部領域 >> 甲状腺
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   左右対称性に甲状腺腫大が見られることが一般的だが
    病態が進行すると甲状腺は萎縮して観察されるようになる


   甲状腺実質は不均一に観察され、甲状腺辺縁に凹凸がみられる


   甲状腺実質エコーレベルは正常に観察される
    病態が進行したものではエコーレベルが低下して観察される




  慢性甲状腺炎(橋本病)は、橋本(1912年)によって最初に報告された病態で
リンパ球、形質細胞の慢性浸潤がみられる自己免疫性甲状腺炎である。


慢性甲状腺炎には甲状腺腫のある慢性甲状腺炎(橋本病)と甲状腺を触れない萎縮性甲状腺炎とが有名だが
病期によって、甲状腺の腫大の程度や甲状腺機能低下の程度は異なる。
甲状腺機能低下症の原因疾患としては、慢性甲状腺炎の頻度が最も多い。


慢性甲状腺炎の病態分類を以下に示す。
潜在性自己免疫性
甲状腺炎
慢性自己免疫性
甲状腺炎
古典的橋本病 萎縮性甲状腺炎
病態 初期 中期 後期 終末期
抗甲状腺抗体 陽性 陽性 陽性 陽性
甲状腺腫大 なし 軽度~中等度
の腫大
腫大 萎縮
甲状腺機能 正常 正常、もしくは
機能低下
正常、もしくは
機能低下
機能低下



慢性甲状腺炎(橋本病)は中年の女性に多く見られ、甲状腺は病態が進行するとびまん性に硬く腫大し
終末期を迎えると、一転して萎縮する。
最初は特別な症状を示さないことが多いが、しだいに甲状腺組織が破壊されて甲状腺機能低下症にすすむ。


組織学的にはリンパ球や形質細胞の浸潤、リンパ濾胞形成をびまん性に認める。
病態の進行とともにリンパ球系細胞の浸潤を生じたものから、ほとんどが線維成分に置き換えられ
極めて萎縮した濾胞が散見されるものまで様々な段階がある。


病態が初期の頃はFT3、FT4は正常で、TSHのみが上昇している場合が多い。
病態が進行するとTSHの上昇を受けても甲状腺の破壊が進んでいることから、FT3、FT4が低下してくる。
慢性甲状腺炎に特異的なものは抗サイログロブリン抗体(TgAb)で、
抗マイクロゾーム抗体すなわち抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)がほとんどの症例で陽性になる。
なお、一般的にTRAb、TSAbは陰性である。


超音波検査では、病態の進行に従った甲状腺の腫大を認めるが、大きさが正常範囲の場合も少なくない。
また、病態が進んだ慢性甲状腺炎では萎縮した甲状腺が観察される。
甲状腺実質は不均一に観察されることが多いが、不均一の程度も病態の進行によって変化する。
甲状腺組織の破壊、線維成分への置換が進めば進むほど超音波では
甲状腺実質は不均一に観察されるようになり、甲状腺辺縁に凹凸がみられるようになる。


慢性甲状腺炎(橋本病)の診断ガイドライン (日本甲状腺学会 2001)

 a) 臨床所見
   1、びまん性甲状腺腫大
       ただし、バセドウ病などの他の原因が認められないもの

 b) 検査所見
   1、抗甲状腺マイクロゾーム(またはTPO)抗体陽性
   2、抗サイログロブリン抗体陽性
   3、細胞診でリンパ球浸潤を認める
 
  a) および b) の1つ以上を有するもの


(付記)
 1、他の原因が認められない原発性甲状腺機能低下症は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする
 2、甲状腺機能異常も甲状腺腫大も認めないが抗マイクロゾーム抗体または抗サイログロブリン抗体陽性の場合は
   慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする
 3、自己抗体陽性の甲状腺腫瘍は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いと腫瘍の合併と考える
 4、甲状腺超音波検査で内部エコー低下や不均一を認めるものは慢性甲状腺炎(橋本病)の可能性が強い



   腫大の程度が弱い慢性甲状腺炎

   著明な腫大を認めた慢性甲状腺炎

   萎縮性甲状腺炎