超音波検査室 >> 実際の症例 >> 頚部領域 >> 甲状腺
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 55歳 女性


 頚部痛を主訴に当院を受診された患者様です。
 外来にて診察を受けたところ、ちょうど甲状腺の位置と圧痛点が一致しているようだったため
 超音波検査が施行されました。






 甲状腺の大きさ

   甲状腺峡部 2mm
   甲状腺右葉  幅 13mm  厚さ 17mm  長さ 48mm
   甲状腺左葉  幅 15mm  厚さ 20mm  長さ 44mm



 甲状腺自体に明らかな腫大は認めませんが、甲状腺左葉に限局した低エコー領域を認めています。
低エコー領域内部は不均一に観察され、ドップラーをあてると、正常甲状腺実質内には血流が観察されるものの
低エコー領域内部は血流が乏しく観察されています。


検査時に低エコー領域を描出しながら圧迫を加えてみると、痛みを訴えるため圧痛点と低エコー領域は
一致するものと判断し、超音波上、亜急性甲状腺炎を疑う所見と判断しました。
その日のうちに行われた血液検査では、CRPと赤沈が異常値を示しており、亜急性甲状腺炎と断定されました。


 その日から亜急性甲状腺炎として治療が開始されましたが、頚部の圧痛は良くならず
初診から10日後に再度 Follow up の超音波検査が行われました。




 最初に行われた甲状腺の超音波画像と比較すると一目瞭然ですが、
甲状腺左葉内に観察される低エコー領域は、甲状腺左葉全体に広がっているように観察されています。


また、不均一な低エコー領域は、甲状腺峡部や甲状腺右葉にも波及しており、
亜急性甲状腺炎の特徴であるクリーピング現象であると判断できます。
甲状腺右葉の長軸を描出した画像では、亜急性甲状腺炎の特徴的所見でもある地図状の低エコー域が
存在しているように観察されました。


2回目の超音波検査の時の圧痛は、1回目と比べるとやや寛解しているような印象を受けましたが
超音波画像だけで判断すると、1回目よりも2回目の方が炎症が進行している印象を受けます。
一般的にも画像所見は臨床症状よりも遅れることが多く、これも亜急性甲状腺炎の特徴と考えられます。



 初診から4ヶ月後に再度 Follow up 目的で超音波検査が行われました。



 2回目に行われた超音波画像と比較すると、同じ人の甲状腺画像か疑わしいほど所見に変化があります。
3回目に行われた超音波画像では、甲状腺実質内の一部で低エコー領域を認めるものの
甲状腺実質のほとんど全域では、均一な正常甲状腺として描出されています。


3回の径時的に見た超音波画像は明らかな変化を認めており、
この経過は典型的な亜急性甲状腺炎の経過ではないかと考えられます。